また、3か月遅れのスタートになったことで、改編期特有の「新番組を見てみよう」という世間のムードが薄れてしまったことは間違いないでしょう。コロナ禍の中、苦労しながらもスタートを切った他の新番組は、その恩恵を受けられましたし、むしろ緊急事態宣言による外出自粛が追い風になっていた感すらあります。
内容が目新しいものでなかったこともあって、『有田プレビュールーム』と『これって私だけ?』は既存番組より目立つ“新番組”であるはずが、“旧番組”のように既存番組の中に埋もれてしまいました。諸事情があるにせよ、制作サイドにしてみれば4月にスタートできなかったことは痛恨だったのです。
今後、浮上の鍵を握るのは、一刻でも早くヒット企画や名物キャラを生み出せるかどうか。衣食住、エンタメ、豆知識や裏技など、どんなジャンルでもいいのでヒット企画や名物キャラを生み出せたら、SNSで話題になり、メディアに採り上げられ、突破口となっていくでしょう。
さらに、ヒット企画や名物キャラを生み出せたら、そこからスライドした企画やキャラを次々に生み出して、番組のカラーにすることで強みになっていくものです。たとえば、『行列のできる法律相談所』や『人生を変える1分間の深イイ話』(日本テレビ系)のようにスタート時のコンセプトや番組名にとらわれず、柔軟にリニューアルしていくことも視野に入れておいたほうがいいかもしれません。
冒頭でふれたように、現在の世帯視聴率は打ち切りレベルであり、「はじまったばかりだから仕方ない」と考慮してもらえる状態ではないでしょう。内容が他の番組に劣っているわけではないだけに、「どこをどう変えるか」「何をフィーチャーするか」「どんなPRを打つか」などプロデューサーのスキルが問われています。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月20本超のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動している。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。