ライフ

吉田尚記×尾原和啓「イノベーションとコミュニケーション」

ニッポン放送アナウンサーの吉田尚記氏

ニッポン放送アナウンサーの吉田尚記氏

「世間話が苦手」「嫌なコミュニケーションからは全部逃げている」と語るIT批評家の尾原和啓氏。それでもNTTドコモで「iモード」、Googleで「Android」の立ち上げに参画するなど数多くの企業で実績を残してきた。コミュ障でも仕事を上手く回せる秘訣はあるのか──ニッポン放送のアナウンサーで「元・コミュ障」の吉田尚記氏がその真髄に迫った。

 * * *
吉田:いきなりですが、尾原さんはコミュ障であることを自認されていると?

尾原:そうなんです、僕、コミュ障なんですよ。正確には、自分が価値を見出す場所でしかコミュニケーションをしないっていう特化型です。自分にとって嫌なコミュニケーションからは全部逃げているんですよ。リモート飲み会も何回か参加したんですけど、無理だった。

吉田:避けているコミュニケーションってどんなものですか?

尾原:世間話が無理なんです。過去と現在を確保するためのコミュニケーションに興味が持てないんですよ。要はマウンティングのための会話ですよね。あなたの昔の自慢話なんか興味ないよって話で(笑)。

 昔は「巨人・大鵬・卵焼き」の3つの話題を出せば誰とでも会話できたといわれていましたけど、パーソナライズ化されたネット空間で生きる現代人は、隣の人と自分が見ている世界がまったく違うってことがあるじゃないですか。一人一人に違うコミュニティが存在し、しかもそのコミュニティ内なら、好きな話を好きな相手といくらでもしゃべれる。わざわざ好きでもない話題を追いかけて、ほかのコミュニティの人間と会話する必要があるのか?って思っている人もたくさんいると思うんです。

吉田:いわゆる、「世間」というものがもう存在しないんですよね。僕、VR(ヴァーチャルリアリティ)に凄く興味があって、深く関わっているんです。そこで体験した盛り上がりを、ある大手テック企業の人にお話したら、「え、VRってもう下火なんじゃないの?」と言われてしまって。こんな近くで大きな「分断」があるんだと驚きました。

 だからこそ、どんなに分断された、パーソナライズ化された社会でも「視界がまったく違う人ともコミュニケーションをしていこうぜ」ってつもりで活動しています。

尾原:「越境」って言われる行動ですよね。自分の世界の中に閉じこもっている限り、その世界の外側にあるものを認識できないので、境界線を越えて外に向かおうよって話で。遠くにあるものとつながることで、新しい選択肢があるってことに気づける。今まで日本という国は、比較的「越境」をしなくてもいい環境だったんですよね。ただ社会がここまでパーソナライズされてしまって、隣の人とも見えている世界が違うというようになると、あちこちで強制的に「越境」が起こっちゃうわけですよね。「越境」がそうやって社会の大前提になる一方で、それぞれのパーソナライズされた世界の中に閉じこもるという選択肢もあるわけじゃないですか。

吉田:閉じこもるって選択肢を選ぶ人がたくさんいるのは間違いないと思います。でもそういう人たちって、パーソナルな空間に安住する一方で、潜在的な恐怖を抱えていると思うんですよね。選択肢がない中で閉じこもるのって、ものすごい恐怖だと思うんです。だから実際に使うかどうかは別として、武器を持っていれば、恐怖に駆られずに生きていけるような気がするんです。そういう意味もあって新著(『元コミュ障アナウンサーが考案した 会話がしんどい人のための話し方・聞き方の教科書』アスコム刊)ではコミュニケーションの技術を「武器」って表現したんですよね。

尾原:拝読しましたがすごく有用な武器を提供しているなと。この新型コロナによって、旅行をはじめとした物理的な移動が難しくなったときに、必然的に自分の好きの偏愛空間の中に引きこもれる方向に技術が進んでいていくのは避けられないことと思います。だけどひとつの世界に支配されることは、当然自分が狭くなってしまう可能性も抱えるわけで。それを防ぐために「越境」できる能力を持つということは、確かに大きな「武器」になりますよね。

関連記事

トピックス

岡田監督
【記事から消えた「お~ん」】阪神・岡田監督が囲み取材再開も、記者の“録音自粛”で「そらそうよ」や関西弁など各紙共通の表現が消滅
NEWSポストセブン
愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
「特定抗争指定暴力団」に指定する標章を、山口組総本部に貼る兵庫県警の捜査員。2020年1月(時事通信フォト)
《山口組新報にみる最新ヤクザ事情》「川柳」にみる取り締まり強化への嘆き 政治をネタに「政治家の 使用者責任 何処へと」
NEWSポストセブン
成田きんさんの息子・幸男さん
【きんさん・ぎんさん】成田きんさんの息子・幸男さんは93歳 長寿の秘訣は「洒落っ気、色っ気、食いっ気です」
週刊ポスト
嵐について「必ず5人で集まって話をします」と語った大野智
【独占激白】嵐・大野智、活動休止後初めて取材に応じた!「今年に入ってから何度も会ってますよ。招集をかけるのは翔くんかな」
女性セブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
不倫騒動や事務所からの独立で世間の話題となった広末涼子(時事通信フォト)
《「子供たちのために…」に批判の声》広末涼子、復帰するも立ちはだかる「壁」 ”完全復活”のために今からでも遅くない「記者会見」を開く必要性
NEWSポストセブン