芸能

松本人志の『FREEZE』を見てみちょぱに申し訳なくなった理由

「みちょぱ、ごめん!」が第一声(イラスト/ヨシムラヒロム)

「みちょぱ、ごめん!」が第一声(イラスト/ヨシムラヒロム)

 かつて、何かを「我慢」する様子は、テレビのバラエティ番組として人気を集めるジャンルだった。だが、アクシデントや事故が多発して一般人が参加するタイプの番組が制作されなくなり、その後は入念に準備をした番組と大きなリアクションをとる芸人だけで構成されるものが放送されていたが、それも最近ではほとんど見られなくなった。「我慢」を競い、その様子を見せる『HITOSHI MATSUMOTO presents FREEZE』(Amazonプライム・ビデオ)のシーズン2を見て、イラストレーターでコラムニストであり、松本人志のお笑い論を信奉してきたヨシムラヒロム氏が、みちょぱに申し訳ない気持ちになってしまった理由について考えた。

 * * *
「みちょぱ、ごめん!」

 Amazonプライム・ビデオのオリジナルコンテンツ『FREEZE』の新作を観て、抱いた最初の感想である。2年ぶりに配信された松本人志がプロデュースする目玉コンテンツにも関わらず、笑い以上に後味の悪さが残った。終始、「どこを楽しめばいいのか……」と考えてしまった。

 松本考案の『FREEZE』とは文字通り「動くな!」をテーマにしたゲームである。参加者は無機質な部屋に置かれた椅子に腰掛け、腕を組む。この状態が『FREEZE』の基本姿勢となり、様々な仕掛けに耐えていく。最も動かなかった人、驚かなかった人が勝者となる。参加者にショックを与えるため、様々な仕掛けが予告なく動き出す。マジックハンドに付けられた電気ショックが痛覚を刺激し、マネキンから吐き出される白く臭いゲボが顔面を汚し、ピストルはいきなり空砲を鳴らす。生きたカエルや老人の口から出されたばかりの入れ歯が口に押し付けられることも……。

 動いてはいけない状況下でハプニングが起き、それに反応をしまいと必死で取り繕う不自然さから生まれる笑いに注目する。要するに、『FREEZE』は人が我慢をしている様子を楽しむコンテンツだ。

「どんな仕掛けが出てくるんだろう」「どんな顔で我慢するんだろう」といった部分が笑いのキモである。いま主流となりつつある「誰も傷つけない笑い」の真逆、誰かを傷つけて笑うスタイルともいえる。タレントが何かしら傷つけられた結果、生まれる笑いである。そういったことに関し、個人的には嫌悪感を持っていないタイプだと自認しているが、『FREEZE』の場合は工夫がなさすぎる。直に身体を傷つけ、そのリアクションを楽しむ。それを無邪気に笑うことはできなかった。生み出される笑いは前時代的、いやレベル的には中学生のいじめと同等である。こんな僕でも「う~ん」と唸ってしまった。

 構図がいじめに近いことから、シーズン1には多くのクレームも寄せられたそうで。シーズン2では前作ではジャッジマンに徹していた松本も参加者となっていた。

 前作は個人戦だったが今作からはチーム戦へと変更され、芸人チーム(松本人志、藤本敏史、小峠英二、せいや)、女性チーム(大島美幸、野呂佳代、丸山桂里奈、みちょぱ)、チャンピオンチーム(武蔵、真壁刀義、本間朋晃、亀田興毅)による勝ち残り戦が繰り広げられた。

 視聴者の興味は「今回から参加者となった松本がどのようなリアクションをとるのか」に集まっていたと思う。しかし、その期待はあっさりと裏切られた。全9試合のうち、松本は第3試合に参加をする。松本、みちょぱ、本間の三つ巴の戦いで、あっけなく松本は敗退する。『FREEZE』の最大の魅力である仕掛けに怯えつつ耐える表情や負け顔を当の松本がほとんど見せていない。

 敗退後は、『FREEZE』に恐怖する芸人チームメンバーに「もう顔からして負け顔になってるなぁ!」「全然アカン、もうリアクションしてもうてるよ!」と上から目線でコメントをする立場に落ち着いた。松本が番組を盛り上げるためにやっていることは百も承知だが、視聴者からすれば「すぐに負けたお前が何を言うとるねん!」とツッコミたくもなる。大晦日恒例となった『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ制作)の「笑ってはいけないシリーズ」では、松本自身が我慢できずに次々と罰ゲームにさらされて、後腐れなく笑えるのに……。

関連キーワード

関連記事

トピックス

オフの日は夕方から飲み続けると公言する今田美桜(時事通信フォト)
【撮影終わりの送迎車でハイボール】今田美桜の酒豪伝説 親友・永野芽郁と“ダラダラ飲み”、ほろ酔い顔にスタッフもメロメロ
週刊ポスト
バドミントンの大会に出場されていた悠仁さま(写真/宮内庁提供)
《部活動に奮闘》悠仁さま、高校のバドミントン大会にご出場 黒ジャージー、黒スニーカーのスポーティーなお姿
女性セブン
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
《那須町男女遺体遺棄事件》剛腕経営者だった被害者は近隣店舗と頻繁にトラブル 上野界隈では中国マフィアの影響も
女性セブン
日本、メジャーで活躍した松井秀喜氏(時事通信フォト)
【水原一平騒動も対照的】松井秀喜と全く違う「大谷翔平の生き方」結婚相手・真美子さんの公開や「通訳」をめぐる大きな違い
NEWSポストセブン
足を止め、取材に答える大野
【活動休止後初!独占告白】大野智、「嵐」再始動に「必ず5人で集まって話をします」、自動車教習所通いには「免許はあともう少しかな」
女性セブン
今年1月から番組に復帰した神田正輝(事務所SNS より)
「本人が絶対話さない病状」激やせ復帰の神田正輝、『旅サラダ』番組存続の今後とスタッフが驚愕した“神田の変化”
NEWSポストセブン
大谷翔平選手(時事通信フォト)と妻・真美子さん(富士通レッドウェーブ公式ブログより)
《水原一平ショック》大谷翔平は「真美子なら安心してボケられる」妻の同級生が明かした「女神様キャラ」な一面
NEWSポストセブン
裏金問題を受けて辞職した宮澤博行・衆院議員
【パパ活辞職】宮澤博行議員、夜の繁華街でキャバクラ嬢に破顔 今井絵理子議員が食べた後の骨をむさぼり食う芸も
NEWSポストセブン
二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ
《独立後相次ぐオファー》二宮和也が『光る君へ』で大河ドラマ初出演へ 「終盤に出てくる重要な役」か
女性セブン
被害者の宝島龍太郎さん。上野で飲食店などを経営していた
《那須・2遺体》被害者は中国人オーナーが爆増した上野の繁華街で有名人「監禁や暴力は日常」「悪口がトラブルのもと」トラブル相次ぐ上野エリアの今
NEWSポストセブン
交際中のテレ朝斎藤アナとラグビー日本代表姫野選手
《名古屋お泊りデート写真》テレ朝・斎藤ちはるアナが乗り込んだラグビー姫野和樹の愛車助手席「無防備なジャージ姿のお忍び愛」
NEWSポストセブン
運送会社社長の大川さんを殺害した内田洋輔被告
【埼玉・会社社長メッタ刺し事件】「骨折していたのに何度も…」被害者の親友が語った29歳容疑者の事件後の“不可解な動き”
NEWSポストセブン