国内

伊勢谷事件で考える薬物と家族 親がすべきは「何もしない」

保釈された伊勢谷容疑者(時事通信フォト)

 俳優の伊勢谷友介(44)が大麻取締法違反で警察に逮捕されてから1か月。芸能界やスポーツ界では、毎年のように禁止薬物の所持・使用の容疑で逮捕されている者がいる。定期的に繰り返される芸能人の薬物事件のニュースは、「禁止薬物はどんどん社会に広がっている」という認識を抱かせるのに十分なのだが、検挙人員の統計だけを見ると、必ずしもそうとは言えない。

 大麻については2009年の3087件から一時期減ったものの、ここ数年少し増えて2018年は3762件だった。覚せい剤については同1万1873件から微減傾向が続き、同1万30件と減少している。薬物事案全体で見ると、検挙人員はここ10年で1万5000件前後と、ほぼ横ばいだ(厚労省による集計)。「ダメぜったい」「人間やめますか」方式の“脅し”を使った抑止効果で検挙人数が激減するわけではないようだ。

 これまでのキャンペーンで植え付けられた「薬物依存症になると人格は破壊され、人間としてダメになる」というイメージは、社会の側が回復者を受け入れるときの心理的な壁になる。世間は禁止薬物使用者を「あっち側に行ってしまった人」としか見なくなる。

 そうした現状に対し、「薬物依存症は回復でき、社会復帰もできる」と声を上げているのが、NPO法人「全国薬物依存症家族会連合会(薬家連=やっかれん)」の理事長を務める横川江美子氏だ。

「一度、禁止薬物に手を出したからといって全員が依存症になるわけではないということがさまざまな研究から明らかになっています。厚労省も『依存症は誰でもなる可能性がある。治療すれば回復する病気である。復帰できる社会をつくる』ということを念頭に置いた施策を打っています。これはまさに私たち家族会が訴えてきたことです」

 では、薬物依存症になった場合、どのような道を歩めば回復にたどり着けるのか。それには家族の、本人に対する接し方を改めなければならないと横川氏は言う。

「住まいを用意する、金を渡す、叱責する、懇願する、脅す、なだめる、コントロールしようとする、……これらは全部効きません。家族が本人のためと思ってやるこれらのことは、効果がないばかりか逆効果になります。世の中は『どうして周囲がなんとかできなかったのか』といいますが、いい大人に対して周りができることなんてないのです」

関連記事

トピックス

炊き出しボランティアのほとんどは、真面目な運営なのだが……(写真提供/イメージマート)
「昔はやんちゃだった」グループによる炊き出しボランティアに紛れ込む”不届きな輩たち” 一部で強引な資金調達を行う者や貧困ビジネスに誘うリクルーターも
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
小室眞子さん“暴露や私生活の切り売りをビジネスにしない”質素な生活に米メディアが注目 親の威光に頼らず自分の道を進む姿が称賛される
女性セブン
組織改革を進める六代目山口組で最高幹部が急逝した(司忍組長。時事通信フォト)
【六代目山口組最高幹部が急逝】司忍組長がサングラスを外し厳しい表情で…暴排条例下で開かれた「厳戒態勢葬儀の全容」
NEWSポストセブン
藤浪晋太郎(左)に目をつけたのはDeNAの南場智子球団オーナー(時事通信フォト)
《藤浪晋太郎の“復活計画”が進行中》獲得決めたDeNAの南場智子球団オーナーの“勝算” DeNAのトレーニング施設『DOCK』で「科学的に再生させる方針」
週刊ポスト
手を繋いでレッドカーペットを歩いた大谷と真美子さん(時事通信)
《「ダサい」と言われた過去も》大谷翔平がレッドカーペットでイジられた“ファッションセンスの向上”「真美子さんが君をアップグレードしてくれたんだね」
NEWSポストセブン
「漫才&コント 二刀流No.1決定戦」と題したお笑い賞レース『ダブルインパクト』(番組公式HPより)
夏のお笑い賞レースがついに開催!漫才・コントの二刀流『ダブルインパクト』への期待と不安、“漫才とコントの境界線問題”は?
NEWSポストセブン
パリの歴史ある森で衝撃的な光景に遭遇した__
《パリ「ブローニュの森」の非合法売買春の実態》「この森には危険がたくさんある」南米出身のエレナ(仮名)が明かす安すぎる値段「オーラルは20ユーロ(約3400円)」
NEWSポストセブン
韓国・李在明大統領の黒い交際疑惑(時事通信フォト)
「市長の執務室で机に土足の足を乗せてふんぞり返る男性と…」韓国・李在明大統領“マフィアと交際”疑惑のツーショットが拡散 蜜月を示す複数の情報も
週刊ポスト
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
高校時代にレイプ被害で自主退学に追い込まれ…過去の交際男性から「顔は好きじゃない」中核派“謎の美女”が明かす人生の転換点
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《死刑執行》座間9人殺害の白石死刑囚が語っていた「殺害せずに解放した女性」のこと 判断基準にしていたのは「金を得るための恐怖のフローチャート」
NEWSポストセブン
ゆっくりとベビーカーを押す小室さん(2025年5月)
《小室圭さんの赤ちゃん片手抱っこが話題》眞子さんとの第1子は“生後3か月未満”か 生育環境で身についたイクメンの極意「できるほうがやればいい」
NEWSポストセブン
中核派の“ジャンヌ・ダルク”とも言われるニノミヤさん(仮称)の壮絶な半生を取材した
【独占インタビュー】お嬢様学校出身、同性愛、整形400万円…過激デモに出没する中核派“謎の美女”ニノミヤさん(21)が明かす半生「若い女性を虐げる社会を変えるには政治しかない」
NEWSポストセブン