形よりも気持ち
葬送ジャーナリストの碑文谷創氏は、常識が激変する時代の葬儀や弔い方について、こう指摘する。
「時代が変わろうとも、亡くなった人への想いや偲ぶ気持ちが伝わるかどうかが大切です。葬儀だから直接行かないと失礼とか、黒服を着て行かなくてはいけないとか、そうした表面的なことにとらわれるのではなく、弔意を伝えようとする気持ちがいちばん重要なのです」
そうした観点から『冠婚葬祭入門』を読むのも味わい深い。
〈お悔みのことばは、月並みなほどよい〉と題された項目がある。塩月氏は自身の父の告別式で名文句の演説口調でお悔やみを述べた人がいたことを回想しながら、こう書いている。
〈遺族と視線を合わせてお辞儀するとき、ふかい哀悼の表情があらわれていれば、ひとことも口をきかなくとも、口先だけの悔みのことばよりも、はるかに誠意のあるお悔みになります〉
時代や環境の変化によって葬儀の形式に変化はあれど、「故人を弔う」思いの表現は、今でも50年前の大ベストセラーから学べることが多い。
※週刊ポスト2020年10月30日号