「ユニクロ超え」の真価
昨年あたりから「ワークマンがユニクロ超え」という記事がメディアにいくつか掲載されました。いったい何がユニクロ超えなのかと思って読んでみると、店舗数がユニクロを上回ったというものです。(※2020年3月末時点でのワークマンの店舗数は863店舗)
国内店舗数は減らしつつあるユニクロ(AFP=時事通信フォト)
しかし、ワークマンとユニクロの売上高を冷静に比較してみると、国内ユニクロの売上高は2020年8月期で8068億、ワークマンの2021年3月期の売上高見通しは990億円です。じつに売り上げ規模は8分の1弱です。
つまり、店舗数が多くて売上高が8分の1程度いうことは、1店舗あたりの売上高が少ないということです。
ユニクロの国内売上高8068億円の中にはネット通販売り上げの1000億円も含まれているので、実店舗売上高はおよそ7000億円。店舗数はフランチャイズを含むと全813店舗(2020年10月時点)ありますから、単純計算で1店舗当たりの平均売上高は8億6000万円ほどになります。その一方、ワークマンは1店舗あたり1億円強しかないということになります。
そもそも店舗数だけ増えてもまったく意味がありません。いまユニクロはむしろ店舗数を減らして、その分効率のよいネット通販に注力しており、大きく業績を伸ばしています。ネット通販売上高1000億円というのは、アパレル業界の中では断トツのトップです。
そんな中、ワークマンは前述したように、10年後には3業態合わせて1500店舗、最終目標のワークマン女子1000店舗が達成されれば、2100店舗にもなります。この1500店舗とか2000店舗構想というのは、かつてのコンビニ各社やマクドナルド、現在のしまむらと同じ規模です。
しかし、店舗数を増やしすぎた各社がどのようになっているのかは語るまでもないでしょう。
コンビニは弁当や総菜など商品単価こそ低いですが、一人当たりの利用頻度は高く、一日に何度も利用する人もいます。そのため、大量出店でも各社はそれなりの需要を掴めていました。しかし、そんなコンビニでも店舗数を増やしすぎて飽和状態に陥り、いまや縮小傾向にあります。
一方、洋服は食料品よりは単価が高いものの、一度買うと最低でも何か月、場合によっては何年も使えるため、コンビニのような利用頻度にはなりません。しかも、ワークマンが注力するアウトドア・スポーツ向けウェアは作業着と違って競争も激しく、店舗数が多いからといって、その分需要が伸びるとも限りません。