柴門:実は私は50代の頃、もう描かなくてもいいかなと思って、漫画から距離を置いていたことがあったんです。俳句をやってみたり、仏像とか美術に目を向けてみたり。でも、自分の中にある“表現したい”という強いマグマのようなものはやっぱり俳句や仏像じゃダメでした。そんな時期を経て60才になる直前に、最後の作品だと思って描き始めたのが『恋母』だったんです。私はやっぱり描いていないといられないんだと実感した連載で。週刊誌のスケジュールは還暦の身にはそれはそれはキツかったけど、『恋母』を描いて改めて、一生漫画家としてやっていこうと。そんな作品だからこそ、ドラマ化は感慨深い思いでいっぱいです。
大石:魅力的なキャラクターがたくさんいるから、どの母に共感して、どの男に恋するかは人それぞれだけど、翌週の放送が見たくてたまらない!と待ち遠しくなるように力を入れて作っています。だからぜひドラマをご覧になってほしいです。
柴門:私もいち視聴者として待ち遠しいです。ドラマのラストシーンもすごく気になる。原作もまだ完結していないので、ドラマも漫画もどちらの『恋母』も楽しみにしてください。
【プロフィール】
柴門ふみ(さいもん・ふみ)/1957年生まれ。漫画家。1979年『クモ男フンばる!』でデビュー。代表作に『同・級・生』『東京ラブストーリー』『あすなろ白書』(いずれも小学館)などがあり、ドラマ化された作品も多数。『老いては夫を従え』(小学館)などエッセイにも多くのファンがいる。
大石静(おおいし・しずか)/1951年生まれ。脚本家。1986年に『水曜日の恋人たち 見合いの傾向と対策』で脚本家デビュー。以降、『ふたりっ子』『セカンドバージン』(いずれもNHK)、『家売るオンナ』(日本テレビ系)、『大恋愛〜僕を忘れる君と』(TBS系)など数多くの脚本を執筆し名ドラマを送り出す。
撮影/平林直己
※女性セブン2020年11月5・12日号