漫画家の弘兼憲史氏
筆坂氏のように家庭で孫から「おじいちゃん」と呼ばれていればまだ“免疫”があるものの、孫のいない中高年はさらに複雑な気持ちになるようだ。2年前に定年退職した自営業のA氏(67)はこう話す。
「うちには孫はいません。だから周りの同年代と比べても“おじいちゃん”という実感はない。自由に旅行や趣味に時間とお金を費やして、それこそ今風の若々しい夫婦だと羨ましがられているんです。
それが電車に乗っていた時に、中学生から『おじいちゃん、どうぞ』と席を譲られた時にはとにかくショックでした。年寄りという自覚なんて一切なかったのに、『おじいちゃん』扱いされるとこんなに傷つくのかと。もう1年ほど前のことですが、いまだに心に残っています」
投稿にもあったように、テレビ番組などでは、町中で出会う初老の男性に親しみをもって「おじいちゃん」と呼び掛けるシーンはよく見られる。
呼びかけるほうに悪意はないのに、なぜ嫌な気持ちになるのか。漫画家の弘兼憲史氏(73)はこう読み解く。
「『おじいちゃん』と呼ばれると、若干、上から目線を感じますよね。“労わってあげるべき存在”と位置づけて、優しくそう呼びかけるのでしょうが、その発想自体が上から目線です。その後に続く言葉も子ども扱いをしたような口調になっていきますし、バカにされているような気分になるわけです」
※週刊ポスト2020年11月6・13日号