“11道州”各都市の明暗
都道府県を廃止して地方行政を効率化し、規制緩和とともに地方分権を進めるという道州制は、「まずは自助」を掲げて、競争による地方の再編と自立をめざす菅首相の政治姿勢とも一致する。
だが道州制の導入は諸刃の剣でもある。立命館大学特任教授(行政学・地方自治論)の村上弘氏が言う。
「道州制による広域自治体の統合は、地方都市の衰退につながる。とくに心配なのが、州都にならなかった各県の県庁所在地です。その地域の政治行政機能や地銀、大企業の支社、大学などは県庁所在地に集まっていますが、州都にならなかった場合、単なる“普通の地方都市”となり、機能やブランド力の低下、人口減少、地価下落など様々な影響が出る可能性がある」
権限が州知事に集中することも予想される。
「道州制では府県の廃止で州への『州央集権』が発生します。ワンマン州知事に権力が集中したり、国の責任が分散されて、新型コロナのような危機への対応が手薄になるリスクが生じる。州が独立運動を起こし、日本という国家が解体されるかもしれません」(村上氏)
道州制は、県が州に変わるだけではない。強い都市には人が集まって競争力がますます強化されるが、地方の街が衰退するという「居住地格差」が拡大する怖れがある。「浮かぶ都市」と「沈む街」の二極化だ。
※週刊ポスト2020年11月27日・12月4日号