アフリカの選挙は「部族長間の話し合い」
選挙管理委員会の独立性、透明性、公平性は、選挙において最も担保されるべきものである。だが、それだけにアフリカや中東諸国では問題が起きやすい部分でもある。例えばタンザニアでは、記入済みの投票用紙が詰まった投票箱が発見され、それを指摘した野党議員が逮捕されたという。
アフガニスタンでも、投票箱をすり替えたり有権者の最大数が500人の投票所で、500票ぴったりの票が片方の箱にだけに入っていたという不正も明らかになっている。
「アフリカでは、そもそも誰が何票獲得してようが関係ない。選挙管理委員会が適当に票数を操作して、ある候補者が勝ったことにすることが多い」
2018年にコンゴ民主共和国で行われた大統領選挙では、選挙管理委員会が現大統領のフェリックス・チセクディ氏が勝利したと発表したが、英フィナンシャル・タイムズ紙は、有力視されていたマルタン・ファユル候補が6割の得票率で勝っていたという調査結果を発表。
今年10月に行われたタンザニアの大統領選でも、選挙管理委員会は現職大統領が得票率84%で圧勝したと発表したが、政権による大々的な不正が行われたため、野党が選挙の無効を主張しても、現職大統領はそれをあっさり退け、就任式を行っている。
「アフリカの国民は、選挙で民意が反映されるなどとは考えていないし、選挙や民主主義にそれほど期待していない。クーデターも頻繁に起きるという背景から、大きなところで間違わないでくれれば誰でも良いという風潮だ。経済援助をしてくれる欧米諸国に民主的な選挙をするよう言われているから、形式的に選挙をしているにすぎないという面もある。民主主義で選ばれた大統領にとっても正当性を主張できるという利点がある」
つまり、部族長間の話し合いで決めたことを、「選挙」という枠組みの中でやっているだけにすぎない。国民一人一人に決める権利など与えれば、逆に混乱を招き、不正の余地が広がるのだろう。