国内

困窮する外国人技能実習生 日本人が犯罪をそそのかす構図も

農業など人手不足の職場へ外国人技能実習生が派遣されることが多い(イメージ)

農業など人手不足の職場へ外国人技能実習生が派遣されることが多い(イメージ)

 ベトナム人の技能実習生による犯罪が立て続けに報じられている。それらのニュースに接したとき、ネットでよく見かける「また外国人か」は、治安の悪化を憂えるのに的を射た表現なのだろうか? ライターの森鷹久氏が、窮した外国人を狙う日本人グループの存在についてレポートする。

 * * *
 北関東で相次いだ家畜や農作物の盗難事件──。

 連日テレビや新聞で報じられ、一部で噂されていた通り、容疑者として複数のベトナム人が逮捕された。そのほとんどが「技能実習生」として来日し、農家などで働きながら賃金を得て、母国の家族や親族に送金する生活を送っていた。事件を取材したテレビ局社会部記者が言う。

「実習生たちは、新型コロナウイルスの影響で仕事もなくなり、かといって国にも帰ることができず、本当に切羽詰まっていたようです。犯人の知り合いだというベトナム人に話を聞くと、悪いことだとは思うが生きるためには仕方がない、人を傷つけることは嫌で泥棒をしたのではないかと同情していました」(テレビ局社会部記者)

 また、逮捕されたベトナム人の周辺を取材すると、次のような話も聞こえてくる。

「結局みんな、日本に来れば技術を学べるだけでなく大金も稼げると思って、ベトナムの送り出し機関やブローカーに数百万円を払って来ている。もちろん借金。ところが実習は、農家のお手伝い、雑用ばかり、金も月に10万ちょっとしか貰えない。これじゃ仕送りどころか、借金も返せない。騙された、と思っている人は少なくない」(群馬県内農業関係者)

「技能実習」や「研修」の在留資格で外国人が働きながら日本に滞在できる外国人技能実習制度によって、教育面よりも実質的な労働が重視される現在のような形になったのは2010年から。2009年に入国管理法が改正され、入国してすぐ技能実習、つまり労働力としてあてにできるようになったためだった。以降、日本中の働く場所、その多くは人手不足の職場で働く外国人の姿が激増した。

 外国人技能実習生の送り出し機関や、あっせんするブローカーによる問題は以前から指摘されており、日本側も対応していないわけではない。法改正を重ね、今では認定されていない送り出し機関からの実習生受け入れはしていないし、いわゆるブローカーの活動そのものが違反、という建前にはなっている。ただし、正規のはずの送り出し機関においても賄賂などによって不正が行われている事例もあり、100%防ぐことはできていない。不正が起きないように2国間取り決めをするなどの取り組みも2017年から始まっているが、今も厳しい現実は存在している。

関連記事

トピックス

ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
相撲協会の公式カレンダー
《大相撲「番付崩壊時代のカレンダー」はつらいよ》2025年は1月に引退の照ノ富士が4月まで連続登場の“困った事態”に 来年は大の里・豊昇龍の2横綱体制で安泰か 表紙や売り場の置き位置にも変化が
NEWSポストセブン
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト
超音波スカルプケアデバイスの「ソノリプロ」。強気の「90日間返金保証」の秘密とは──
超音波スカルプケアデバイス「ソノリプロ」開発者が明かす強気の「90日間全額返金保証」をつけられる理由とは《頭皮の気になる部分をケア》
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
初代優勝者がつくったカクテル『鳳鳴(ほうめい)』。SUNTORY WORLD WHISKY「碧Ao」(右)をベースに日本の春を象徴する桜を使用したリキュール「KANADE〈奏〉桜」などが使われている
《“バーテンダーNo.1”が決まる》『サントリー ザ・バーテンダーアワード2025』に込められた未来へ続く「洋酒文化伝承」にかける思い
NEWSポストセブン