山手線・高輪ゲートウェイ駅の消毒作業ロボット。上部の噴霧器から手すりに消毒液を散布する(時事通信フォト)
問題の業者は、その推奨されないことばかりを実施するだけでなく、件の「次亜塩素酸水」すらそう呼べるものか怪しいものを使用していたというのである。
「次亜塩素酸水が完全にインチキだ、とは言いません。やり方によっては除菌ができる場合もある。でも連中が使っているのは、聞いたこともない関東の雑貨屋が作っている液体。その液体を複数の素人業者が使っている。殺菌効果なんかほとんどないのでは」(望月さん)
なぜ、そんな胡散臭い除菌業者に依頼してしまったのか。最近やっと客足が戻ってきたという飲食店だったから、店主も必死である。一刻も早く店を消毒し、客に安心して来てもらえるようにしたい、その一心だったのだろう。
「うちなんかは、もう手一杯。新たな問い合わせが来ても受けられない状況。そういう実情につけ込んでくるのが、消毒のことなんて本当は分かっていないインチキ業者です」(望月さん)
西に弱った人がいれば行って食い物にし、東に助けを求める人がいれば、やはり食い物にする。シロアリ駆除や、災害で壊れた家の修理をするとやってきては、仕事をしたふりをして金だけ奪っていく。そういった犯罪といえば近年は全国の半グレグループが関わるものだったが、そんな彼らが、消毒ビジネスを見逃すはずがない。
「仕事にあぶれた若い連中を連れて、札幌近郊で消毒屋やってる集団がいますね。元々は違法な競馬の予想屋とか闇金をやっていたような人たち。消毒屋なら、しばらく食いっぱぐれもないということで、複数のグループが入り込んでいます。今後寒くなって感染が再び拡大すると、全国に同じようなグループが現れますよ」
こう話すのは、都内在住の元指定暴力団幹部の男性(40代)。どんな逆境にあっても「金儲け」をしようとするたくましさにはある意味脱帽だが、人様を騙しているのであれば、やはりそれは糾弾されるべき。男性によれば、これらはかなり組織的に行われている可能性があるという。
「金持ちになりたくないか、社長にならないかといって若者たちをネットで集める。こいつらに、街金やサラ金でカネをつまませて(※借金させて)、一応法人を作らせる。情報商材系のマルチでもなんでもいいからやらせてカネを作らせて、半分以上をコンサル費として奪ったら、あとは知らんぷり。そういうのが横行していましたが、合法的にやれる消毒屋は、上がりこそ少ないがリスクが低い。法人設立からホームページやネット広告まで一式を『消毒屋開業』パッケージにして販売しているという反社系の人間も暗躍しているようです」(元暴力団幹部)