思い出されるのは、夏の台風被害にあったエリアに、素性がよく分からない人たちが訪ねてきては、瓦が飛んだり穴が空いた屋根にブルーシートを雑に貼るだけで、法外な値段を請求してくるといったトラブルが多発したことだろう。ああいった業者も、実態があるのかないのかよくわからない法人名を名乗り、金に困った人たちや、右も左も分からないような無知な若者を連れてきては、作業員として働かせていたりもした。修繕のノウハウもないし、被災者はもちろん金に困った若者たちを助けるつもりもないし、分からないなりに屋根を直すつもりもない。全てが嘘、なのである。
「年寄りだけが住む家を訪ねて不必要なリフォームを押し付けてぼったくる手法から変わっていない。人の不幸があったら我先に行って荒らす。火事場泥棒と一緒。まあそういうのは昔からいたわけで、不安になっている人がいるだけで仕事になる。嘘でもいいからその場しのぎで安心だけさせれば、幾ばくかの金は入るし先行投資も何もいらない。詐欺師の部類でもいちばん下にいる連中、それ以下は泥棒とか強盗。コロナで人の動きが鈍い分、奴らはフットワークだけは軽いから好き放題やるんです」(元暴力団幹部)
「被災地域を狙った犯罪」ほど、卑劣なことはない。コロナ禍の混乱に乗じた犯罪も同様だ。彼らが狙うのは「冷静でいられなくなっている人」である。弱り目に祟り目、泣きっ面に蜂、なんてことなにならぬよう、コロナ禍を生き抜くための冷静さを身に付けたい。