国内

賽銭ドロ逮捕の迷彩服で話題 警察官の経費どこまで落ちる?

執念の捜査に必要なものは

執念の捜査には“先立つもの”も必要だ(写真はイメージ)

 10月中旬、埼玉県内の神社で賽銭ドロを働いた男が、張り込み中の捜査員によって逮捕された。その後、この時の映像が全国ニュースで流れると、注目を集めたのが捜査員の衣装だった。軍のレンジャー部隊やハンターが森林で隠密行動を行なうための、本格的な「ギリースーツ」(枯れ草などに偽装した迷彩服)を身にまとっていたからだ。犯人逮捕のために捜査員が自前で用意したようだが、これって経費で落ちるの?

 * * *
「警察だっ!」──漆黒に包まれた境内に響く男たちの怒声。茂みから飛び出した複数の捜査員が1人の男を取り囲む。10月16日、埼玉県入間市で神社の賽銭箱から現金を盗んだとして、30代の男が現行犯逮捕された。捜査員たちは1日4時間、3週間にわたり神社で張り込みを続けていたという。

 被害額は655円。金額の大小にかかわらず、「犯罪を徹底的に取り締まる」との思いが実った執念の逮捕劇だった。犯人確保にあたった捜査員の1人は、枯れ草をまとったギリースーツを着用し、境内の草むらで犯人が現れる瞬間を待った。その姿は、敵を仕留めるべく茂みに潜むゲリラ兵さながらだが、スーツは捜査員が自ら用意したものだという。元神奈川県警刑事の小川泰平氏が語る。

「警察は営利企業ではないので“極力お金を使わない”捜査が当たり前になっています。張り込みの際に使う特殊な衣装も経費とは認められず、基本的に自腹で購入します。偽装のため宅配便の配達員やコンビニ店員、水道局員などから制服を拝借することもありますが、一般の方の誤解を招きかねないため、近年は企業などからの調達は厳しくなっているようです」

 警察庁作成の「捜査費経理の手引き」によると、「捜査費」の使途として「車両・船舶の借上費、聞き込み、張り込み、追尾等に要する経費、捜査協力者への謝礼及び接触経費」などが例示されている。捜査員には月5000円から1万円程度の「捜査諸雑費」が仮払いされるが、事後に使途を明記した支払伝票と領収書を提出し清算する仕組みで、煩雑な手続きを嫌い自腹を切る警察官も少なくないという。

「基本的に経費は『いつ、どこで、誰と、どんな理由で使用したか』が非常に厳しく問われ、精算手続きも厄介。私は尾行時の交通費や、聞き込みの相手との飲食代を経費で落としたことはありません。“ネタ元(情報提供者)”と接触するときは、人目を避けるためサウナやカラオケボックスを利用することもある。“神奈川県警”で領収書をもらうわけにもいきませんし、経費で認められることもない。ネタ元に手渡す交通費や食事代もすべて自腹でした」(小川氏)

 テレビドラマでは、犯人を尾行する刑事が警察手帳を見せ改札を通過するシーンが登場するが、これも例外的なケースに限られるという。

「犯人を追跡、逮捕する際など重大かつ緊急の場合は駅係員の承諾を得て乗車しますが、普段の捜査ではきちんと運賃を支払って乗ります。最近は、私服警官でもICカードを持ち歩いていますが、電車代をいちいち精算することはないのでは」(小川氏)

 同じくテレビドラマでは、タクシーに乗り込み「前の車を追ってくれ!」というシーンも登場するが、もちろん、その場合も支払いは免れない。警視庁刑事が語る。

「そもそも尾行や追跡には捜査車両を使うので、ドラマのようなことは滅多に起きない。緊急時にタクシーを利用した場合はきちんと支払いを済ませるが、お釣りや領収をもらう余裕もなく飛び降りることも多く、結局、費用は捜査員の負担となりがちです」

関連記事

トピックス

水原一平氏はカモにされていたとも(写真/共同通信社)
《胴元にとってカモだった水原一平氏》違法賭博問題、大谷翔平への懸念は「偽証」の罪に問われるケース“最高で5年の連邦刑務所行き”
女性セブン
尊富士
新入幕優勝・尊富士の伊勢ヶ濱部屋に元横綱・白鵬が転籍 照ノ富士との因縁ほか複雑すぎる人間関係トラブルの懸念
週刊ポスト
3大会連続の五輪出場
【闘病を乗り越えてパリ五輪出場決定】池江璃花子、強くなるために決断した“母の支え”との別れ
女性セブン
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
《愛子さま、単身で初の伊勢訪問》三重と奈良で訪れた2日間の足跡をたどる
女性セブン
水原一平氏と大谷翔平(時事通信フォト)
「学歴詐称」疑惑、「怪しげな副業」情報も浮上…違法賭博の水原一平氏“ウソと流浪の経歴” 現在は「妻と一緒に姿を消した」
女性セブン
『志村けんのだいじょうぶだぁ』に出演していた松本典子(左・オフィシャルHPより)、志村けん(右・時事通信フォト)
《松本典子が芸能界復帰》志村けんさんへの感謝と後悔を語る “変顔コント”でファン離れも「あのとき断っていたらアイドルも続いていなかった」
NEWSポストセブン
大阪桐蔭野球部・西谷浩一監督(時事通信フォト)
【甲子園歴代最多勝】西谷浩一監督率いる大阪桐蔭野球部「退部者」が極度に少ないワケ
NEWSポストセブン
がんの種類やステージなど詳細は明かされていない(時事通信フォト)
キャサリン妃、がん公表までに時間を要した背景に「3人の子供を悲しませたくない」という葛藤 ダイアナ妃早逝の過去も影響か
女性セブン
水原氏の騒動発覚直前のタイミングの大谷と結婚相手・真美子さんの姿をキャッチ
【発覚直前の姿】結婚相手・真美子さんは大谷翔平のもとに駆け寄って…水原一平氏解雇騒動前、大谷夫妻の神対応
NEWSポストセブン
大谷翔平に責任論も噴出(写真/USA TODAY Sports/Aflo)
《会見後も止まらぬ米国内の“大谷責任論”》開幕当日に“急襲”したFBIの狙い、次々と記録を塗り替えるアジア人へのやっかみも
女性セブン
創作キャラのアユミを演じたのは、吉柳咲良(右。画像は公式インスタグラムより)
『ブギウギ』最後まで考察合戦 キーマンの“アユミ”のモデルは「美空ひばり」か「江利チエミ」か、複数の人物像がミックスされた理由
女性セブン
違法賭博に関与したと報じられた水原一平氏
《大谷翔平が声明》水原一平氏「ギリギリの生活」で模索していた“ドッグフードビジネス” 現在は紹介文を変更
NEWSポストセブン