羽田の電光掲示板。「欠航」の文字が並ぶ
実際、11月に運行された1850便のうち1030便が貨物だけで飛んでいて、旅客を乗せて飛んだ820便を上回っている。ANAの資料から、この旅客便を使用しながら貨物だけで運行する「NoPax貨物便」が月を追うごとに増えてきていることが分かる。
「新型コロナの影響で船便にも支障が出ているので、航空貨物の需要が伸びてきています。大きい飛行機なら貨物室に30トンくらいは積めるし、運賃も上がってきているので、赤字にならず収入が得られる状態で飛べています。苦しい状況のなかで、好転するのを座して待つわけにはいかず、やれるところを精一杯やっています」(同前)
全日空の資料を基に編集部で再構成
マスクの供給が逼迫しているときには、座席にマスクの荷物をくくりつけて運ぶこともANAは他社に先駆けてやっている。ただし座席を外して荷物室に改造して飛ばすには認可の問題があって難しく、人の出入りだけを想定している客室のドアでは運び込める荷物の形状も制限される。そのため、現在は客室はカラで、下の貨物室だけ満杯にして飛んでいる便が増えているのだ。
このまま荷物だけで運行する便を増やしていくのかと訊ねると、山本マネジャーは「そんなことはありません」と即座に答えて続けた。
「お客様に搭乗していただくほうが収入的にもずっといいんです。いまは貨物だけで飛んでいる便も、新型コロナの感染拡大が落ち着いてお客様が戻ってくれば、交代で一時帰休や地上訓練、さらには他社へ出向しているCA(キャビンアテンダント)を呼び戻して乗せれば旅客便として運行できます。それには飛べる体制を維持しておくことが必要で、貨物だけであっても飛び続けることが大事だと考えています」
ANAだけでなく、同じ努力を他の航空会社も続けている。この未曾有の危機を航空業界が乗り切り、空港に人が戻ってくる日はいつになるのだろうか。
「飛び続けることが大事」という山本マネジャー