本書ではまず、Z世代が人口が少ない日本でなぜ注目され、すぐ上の「ゆとり世代」とは何が違うのかを順序立てて解説する。
「僕は現在20代後半~30代前半のゆとり世代のことも10年前に本に書いていて、どちらも物心ついたら携帯電話があった世代ながら、ゆとりはガラケー第一世代、Zはスマホ第一世代という点が大きく違う。
また10年前は〈若者の○○離れ〉が問題視され、何を訊いても『興味ないっす』だったのが、Z世代が高学年に入るくらいからかな、消費欲が旺盛になった感覚があって、様々なトレンドがSNS上に生まれ、それに触発されるように欲しい物ややりたいことも変化していった。価格帯は安いですけどね。
例えば僕は平成の30年で最も縮小したのが、見栄による消費だと思うんですよ。女の子と高いレストランに行くとか、アイツよりイイ車に乗るとか。そこにSNSという新しい消費動機ができ、インスタ映えとか、旧来型の見栄とは違う形で購買欲を刺激したばかりか、SNSの接触時間が圧倒的に長いZ世代は今や情報の拡散役、〈バズり〉役としても、影響力を持ちつつある。そんなZ世代をいよいよ無視できなくなるのが令和という時代ではないかと」
変わらなくていい成熟社会型の若者
注目はアベノミクス景気と長期に亘る少子化の中、少なくともコロナ前までは超売手市場にあった彼らの、発信欲求の形と大きさだ。過酷な競争や就職難に曝された団塊ジュニアやゆとり世代に比べて競争や不安も少なく済んだZ世代が重視するのが〈「Chill(チル)」という価値観〉だと原田氏は言う。例えば〈今、自分の部屋でネフリでチルってます〉が誘いを断る口実になるほど、〈マイペースに居心地よく過ごす〉ことが優先される。
また、インスタグラムやTikTokに自身の日常を撮っては投稿する彼らは、〈心象が悪くならない範囲で、SNS上で周りと同程度に自己アピールしたいという「同調志向」と「発信意識」〉を併せ持ち、自己顕示欲も数人のいいねがつけば満足できる程度の大きさだ。
「それこそ『れいわ新選組』の山本太郎氏の高校時代の逸話は、昭和の空回りした自己顕示欲とZ世代のそれとを区別するために、後から加えた箇所なんです。アレとは違いますと(笑い)。
現に悪目立ちはしたくない、仲間内にセンスを褒められる程度に発信したいという子が大半で、おそらく思春期にはスマホを持ち、友達や家族といいねを付け合うプチ承認が前提になってるんですね。ツール自体なかった世代は『その程度に発信して何が楽しいの?』と言うだろうけど、その程度の肯定が欲しい子だっているし、大きく出るのだけが能でもないんで」