長期化する低成長経済に抗うでもなく、まったりと等身大で無理のないミーを大事に生きたがる傾向は、実は世界的なものだとか。
「頑張れば何か得られるという感覚自体、幼い頃からデフレで低成長だった彼らにはないし、上をめざせと言われても、でも父ちゃん、給料上がってないじゃん、だったらこのまま別に変わらなくてよくね? って。
でもこれこそが成熟社会型の若者とも言えて、ローマなんて物凄く貧しいのに、みんなお金も使わずに石畳の上で喋っている。それが学費を上げるといった途端、デモをしたり、政治意識は若干差がありますけどね。トレンド自体に今や国境はほぼなく、新大久保と青森のむつ市の韓流ファンの情報量に違いがないほど、地域差もなくなっています」
現在も30人ほどの学生を率い、研究に励む団塊ジュニアの原田氏も、既に40代。
「ゆとりの時はまだ昭和の感覚が分かる子もいたけど、Z世代ではほぼ消滅していますし、彼らは飲みに行くとしても一次会まで。出張に同行したいというから誘った子が『やっぱりお母さんに反対されたので行けません』とか、腹はもう、ムチャクチャ立ちます!(笑い)
確かに上澄みの層には海外に人脈を築き、幅広い問題意識を持った子もいる。でも大半の子は無理せずまったりが本音で、象徴的なのが今流行の水煙草〈シーシャ〉ですよ。先日も秋田でシーシャバーを見かけましたし、巻末のトレンド辞典にあるように、様々なトレンドを目まぐるしく生み出すZ世代が近い将来、人口の多い団塊ジュニア共々、消費を牽引するのは間違いない。そのニーズを韓流コスメのように細やかに拾えるか、日本企業は苦手な分野だけに問われていくと思います」
そんな彼らにコロナ後、氷河期が訪れないよう祈るばかりだと元氷河期世代の氏は言い、世代差を超えた現象の面白さにさらに曇りのない目を凝らすのだ。
【プロフィール】
原田曜平(はらだ・ようへい)/1977年東京都生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。同生活総合研究所等を経て、博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーに。現在はマーケティングアナリストとして幅広く活躍。2003年JAAA広告賞・新人部門賞。著書は他に『近頃の若者はなぜダメなのか』『さとり世代』『ヤンキー経済』『ママっ子男子とバブルママ』『18歳選挙世代は日本を変えるか』『パリピ経済』『平成トレンド史』等。166cm、79kg、O型。
構成/橋本紀子 撮影/国府田利光
※週刊ポスト2020年12月25日号