ただし留意しておかなければならないこともある。風刺ネタを取り上げたとしても、あくまでもお笑いとして成立していなければならないという点だ。政治について言及さえすれば、どんな芸でも面白いと言えるわけではないのである。

 こうした点で、お笑い評論家のラリー遠田氏は、ウーマンラッシュアワーの漫才について「言いたいことを言っているというだけでなく、ちゃんと技術があってちゃんと面白い、っていうところを評価すべき」だと主張する。

「ウーマンラッシュアワーは、コンテスト形式だった2013年の『THE MANZAI』で優勝した経験もあり、実力派漫才師として知られています。村本大輔さんが一方的にまくし立てるようにしゃべりまくり、相方の中川パラダイスさんがその間隙を縫って相槌を打っていきます。

 形式としては漫談に近いように見えるかもしれませんが、かつての『漫才ブーム』の頃に活躍したB&B、ツービート、島田紳助・松本竜介なども同じようなスタイルでした。彼らの場合、フロントマンである島田洋七さん、ビートたけしさん、島田紳助さんのしゃべりの技術が突出しているため、それを中心にして漫才を組み立てていました。ウーマンラッシュアワーの漫才もその系譜にあると言えます。

 政治風刺的な内容ばかりが注目されがちですが、早口でよどみなくしゃべり続けて、最後にきっちりオチをつける技術の高さはもっと評価されてもいいと思います」

 ウーマンラッシュアワーは漫才の中で、政治家やニュースキャスターは「悲しい話を悲しいようにしか伝えない」と語っていた。しかし自分たちお笑い芸人はこうした話題を“面白い話”として伝えることができる、と。それは裏を返せば、自分たちが磨いてきたお笑いのスキルに自信があるということでもあるのだろう。

 社会や政治を風刺するというだけで賛否両論が巻き起こっているようでは、まだまだ“日本のお笑いをめぐる状況はオワコン”なのかもしれない──。

◆取材・文/細田成嗣(HEW)

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