期待どおりの爆笑編。地下鉄/私鉄トリビアに満ちた、駒治にしか作れない鉄道落語だ。
もっとも駒治の作品は、鉄道以外のネタも数多い。僕が『地下鉄戦国絵巻』を観た11月の独演会で駒治は他に『さよならヤンキー』と『最後の雪』の2席を演じたが、前者は東京から母の実家(茨城)を訪れた小学生の兄弟が「特攻服でリーゼントで剃り込みの“ヤンキー”という種族」が実在するかを探る冒険譚、後者は上野駅を根城にする伝説のスリ名人が引退して故郷の雪国に帰ろうと決意する人情噺。他に今年だけでも野球ネタ、学園ネタ、音楽ネタ等、色々と楽しませてもらった。
真打になって丸2年、駒治の勢いは目覚ましいものがある。
【プロフィール】
広瀬和生(ひろせ・かずお)/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接してきた。2020年1月に最新刊『21世紀落語史』(光文社新書)を出版するなど著書多数。
※週刊ポスト2021年1月1・8日号