ワクチン接種率とデメリット割合の関係
ここで、ワクチン接種のメリットとデメリットを整理してみよう。
ワクチンを打つメリットは、当然、免疫を獲得して感染を防ぐことだ。一方、デメリットには、接種にかかる費用とワクチンによる副反応が挙げられる。
まず費用について、日本では、新型コロナのワクチン接種は、誰でも無料で受けられることが決まっている。ただし、ここでいう費用は、接種そのものの費用だけを指すわけではない。
人によっては、接種会場までの交通費がかかったり、接種のために仕事を休まなくてはならなかったりすることがあるだろう。複数回接種を受けること自体が面倒と考える人もいるはずだ。そのため、費用がまったくゼロになるとは限らない。
もう一つの副反応について、どんなワクチンでも副反応を完全にゼロにすることはできない。ワクチン接種が始まったイギリスでは、接種後にアレルギー反応が出たケースが報告されている。ただ、副反応にも、いろいろなものがある。一時的な炎症であればデメリットは小さいが、生命の危険にさらされたり、後遺症が残ったりするような副反応となると、大きなデメリットとなる。
ワクチン接種ゲームでは、これらのデメリットを全部まとめたうえでメリットと比較することで、ワクチンを打つか打たないかを考える。つまり、感染を防げることのメリットを100%として、それに対するデメリットの割合に応じて、それぞれの人が接種するかどうかを判断する。
何期か終えた後のワクチン接種ゲームの計算結果のイメージを、グラフ(別掲参照)で見てみよう。横軸に接種のメリットに対するデメリットの割合、縦軸にワクチンの接種率をとる。右にいくほどデメリットが大きくなり、その分、ワクチン接種の魅力は下がる。その結果、グラフは右下がりの曲線となる。
デメリットが少しでもあるとワクチンの接種率は大きく低下する
このグラフを少し細かく見てみよう。デメリットがゼロならば接種率は100%だ(別掲グラフの1の部分)。だが、デメリットが少しでもあると、接種率は大きく低下する。これは、「少しでもデメリットがあるなら、ワクチンは打たない」という人が出てくるためとみられる。
次に、そうした人が抜けたあとは、デメリットが大きくなるにつれて、ワクチンを打つ人がなだらかに減ってくる(別掲グラフの2の部分)。この状態では、「ワクチンを接種して感染するのを避けたい」と思う人が徐々に減るため、接種のデメリットが上がるにつれて接種率が下がるわけだ。
最後に、デメリットがどんどん大きくなり、感染予防のメリットの9割程度になると、ほとんどの人にとってワクチンを打つ意味がなくなってくる(別掲グラフの3の部分)。これは、「たとえワクチンで感染は防げたとしても、重い副反応が出てしまうのでは話にならない」と考える人ばかりの状態だ。こうなると、接種率はゼロまで下がってしまう。