「ワクチン接種ゲーム」のモデル化
次にモデルについて簡単にまとめておこう。一般に、感染症の拡大の様子をあらわすモデルとして、「SIRモデル」が有名である。
これは、人々を「感染しておらず免疫がない人(Susceptible, S)」、「感染している人(Infectious, I)」、「感染から回復して免疫を持っている人(Resistant, R)」の3つの集団に分けて、時間の経過とともに、それぞれの集団がどう変化するかをみていくものだ。
SIRモデルは、新型コロナの感染拡大の予想にも使われている。ただ、SIRモデルをはじめ、どんなモデルも万能ではない。前提の置き方によって、感染者数が急増するといった結果にもなる。昨年の春には、感染者数が猛烈に増えるとの試算結果が報じられて、激しい議論がわきあがったこともあった。
ワクチン接種ゲームでは、SIRモデルのS、つまり「感染しておらず免疫がない人」について、ワクチン接種の有無を反映させる。ある期の始めにワクチンを接種すればその期は感染しないが、接種しなければ一定の確率で感染する。そして、次の期には、また接種の有無を判断する。これを何期も繰り返すことで、接種率の変化と感染拡大の動向をシミュレーション計算していくわけだ。
ワクチンの接種は、それぞれの人が判断する。判断にあたっては、それぞれの人が他人の行動を参考にすると想定する。すなわち、前期に接種しなかった人や接種した人が、どのようなメリット、デメリットを受けたかをもとに、今期の接種の有無を判断する。