「2019年に公開された映画『半世界』では、反抗期を迎えた中学生の息子を持つ母親役を好演。体型を隠すようなダボっとした服を身にまとい、絵に描いたような“中年女性”を体現する一方で、炭焼き職人の夫を献身的に支える美しい妻として取引先に赴くシーンもあり、その振り幅に目を奪われました。
池脇さんは『その女、ジルバ』で年齢の呪縛に囚われていた主人公・新を演じます。昼間は“姥捨て山”と揶揄される職場で働く新ですが、夜の仕事では人生を謳歌する先輩たちから様々なことを学んでいく。40歳の女性が抱える孤独や哀愁を滲ませつつも、子供のように真っさらな気持ちで新しいことを吸収していく新のひたむきな姿は、かつての池脇さんが築いたピュアなイメージにも重なるところがありますね。
人生の転換期を迎えた新のように、『その女、ジルバ』は池脇さんの“これまで”と“これから”を感じられる作品になるのではないでしょうか」(明日菜子)
かつては清純派女優の代表格だった池脇だが、2003年公開の映画『ジョゼと虎と魚たち』で、足の不自由な少女という難役に挑み、ヌードまで披露する女優魂を発揮。“脱清純派”を果たした。近年は、先述の『半世界』など、人生のビターな面を表現する役柄が多く、映画『そこのみにて光輝く』(2014年)では、売春で一家を支えるヒロインを熱演し、第38回日本アカデミー賞で優秀主演女優賞を受賞するなどの高評価を得た。
人生のほろ苦さを演じてきた池脇が、同世代のヒロイン役を通して、人生の素晴らしさを表現する——。『その女、ジルバ』初回の平均世帯視聴率は2016年にスタートした「オトナの土ドラ」枠で最高視聴率を記録したと報じられている。久々の連ドラ主演作が早くもハマリ役となりつつある池脇。新たな代表作となる可能性もありそうだ。
◆取材・文/原田イチボ(HEW)