直撃した記者に笑顔を見せてくれた岡江久美子さん

笑顔を絶やさなかった岡江久美子さん

「当時は、朝7時にスタジオに入ると朝ご飯が出て、7時半入りの人には出ませんでした。それを知ったお父さんが『7時入りの子供が食べているのに、7時半入りの子供に“食べるな”なんて言えないだろう』とすごい剣幕で指摘していました。お父さんは、優しい人なんです」

 子供たちの前でお父さんとして、大先輩の俳優として、綿引さんは、優しいだけでなく、努力も重ねていた。『天までとどけ』で、綿引さんの職場の後輩役を演じた俳優の山崎大輔(66才)は、いまでも当時を忘れられないという。

「職場のシーンのカメラテストでは、台本を持ってせりふを覚えようとしていました。撮影が連日続くので、そうするしかなかったのでしょう。ところが、本番ではNGナシ。しかも、家族のシーンではテスト段階から台本を持たず、もちろんNGも出しません。綿引さんはプロだと思い知らされました」
 
 なぜ、綿引さんはNGを出さなかったのか。その理由を子供たちは知っていた。

「お父さんとお母さんが、ふたりで決めた、たったひとつの約束なんです。それが《子供たちの前ではNGを出さない》。もしも両親がせりふを間違ったら、子供たちに示しがつかないでしょう。そうやって背中を見せて、子供たちに成長してほしかったのだと思います」(前出・須藤)

 その影響で、子供たちはせりふをしっかり覚えてから撮影に臨んでいたという。須藤が記憶している綿引さんのNGはシリーズ8作の中でたったの一度だけだという。

「ぼくたちの道しるべとなってくれていて、まさに、父と母でした」(前出・須藤)

 ふたりのさりげない優しさを感じていたのは長男・正平役を演じた、たかお晃市(47才)も同じだ。

「ぼくたちは夕方から夜になると眠くなってくるので、子供たちのシーンをなるべく早くに終わらせて、夫婦のシーンは子供たちが帰った夜に撮ってくれていたんです」

 パジャマを着たふたりが寝室で語り合う印象的なシーンは、まさに子供が寝静まった夜に撮られていたというわけだ。そんな心優しいふたりが、もうこの世にいない。

「悲しくて、今後、どうしようかと。ちょうど五郎(須藤の役名)とその話をしたところなんです。お父さん、お母さんがいたから集まれたんだけれど、集まる意義がなくなっちゃったよねって……」(前出・たかお)

 しかし、子供たちの両親への思いが消えたわけではない。

「コロナが落ち着いたら、朝早くに集まってお母さんのお墓参りをして、それからお父さんのお墓に行こうなんて話しています」(前出・たかお)

 子供たちの真っ直ぐな思いは、両親が見守る天までとどくに違いない。

※女性セブン2021年2月4日号

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