国立大病院の重症者受け入れ問題に苦言を呈した元厚労相・塩崎恭久氏(時事通信フォト)
特定機能病院とは、難病や重病の患者に高度な医療を提供するほか、治療法の開発や研究などを担う機能を備えていると国が認めた病院。病床数400以上、16以上の診療科などの要件があり、診療報酬が優遇される。ほとんどが大学病院で、冒頭の旭川医科大病院も特定機能病院のひとつだ。
報酬面で優遇され、人材や病床、設備が豊富であるにもかかわらず、22病院が死亡リスクの高い重症者を1人も受け入れていないのである。医療ガバナンス研究所理事長で医師の上昌広氏が指摘する。
「OECD加盟国中、人口あたりの病床数がトップで、新型コロナの感染者が欧米より一ケタ少ない日本で医療崩壊が起きている。複合的な要因が考えられますが、そのうちの大きな一つに、規模の大きい大学病院などがあまり重症者を受け入れていないことがあると考えられるのです。
例えば総病床数が1200床を超え、約1000人の医師がいる東大病院が受け入れたコロナの重症者は、1月7日時点でたったの7人でした」
改めて厚労省に、最新状況を問うと、「特定機能病院の受け入れ状況については公表していません」(医政局地域医療計画課)と答えるのみ。
ただ、都内にある14の特定機能病院が受け入れた患者数については、感染が拡大した1月1日から17日に1日平均6人以上の重症者を受け入れたのは2病院しかなく、8病院は3人より少なかったと報じられている(読売新聞、1月20日付朝刊)。塩崎氏の公開した全国データと同様の傾向が読み取れる内容だ。
なぜ、重症者の受け入れが少ないのか。東京大学医学部附属病院はこう説明する。
「当院には現在、病床1226床、ICU34床があり、そのうち新型コロナ向け病床は軽症・中等症用が30床、重症者用が8床です。1月7日時点の重症病床は7床で、その後、東京都からの要請で8床にしましたが、ほぼ満床の状態が続いています。特定機能病院としての役割を果たすため高度医療を並行して提供しつつ、行政の要請には適切に応じており、重症者の受け入れに消極的ということはありません」(パブリック・リレーションセンター)