「まず高血圧や高脂血症などの診断がつくと必ず薬を処方する慣習がある。薬をもらうと患者が満足することがその背景にあります。2つめは患者が複数の医療機関を受診することで、それぞれの医師から処方されて薬の種類が増えることです。3つめは副作用を止めるための処方があること。副作用を止める薬が別の副作用を招き、それを止める薬がさらなる副作用を招くかたちで、雪だるま式に薬が増えます」
新型コロナによる受診控えが多剤処方という日本医療の悪弊にブレーキをかけて、死者が減った可能性がある。
「受診控えで新たに薬を処方されるケースがなくなり、多剤併用者が減ったと考えられる。同時に多剤併用による死亡リスクが減少して、死者が減ったと推測されます」(近藤さん)
人口動態統計では「循環器系の疾患」による死者数が前年と比べて7963人減少した。循環器系疾患のなかでも心筋梗塞と脳卒中の薬にはさまざまな副作用があるため、ここでも多剤併用の減少が影響した可能性がある。だからといっていきなり薬を止めることも危険が伴う。多剤併用のリスクを充分に理解し、担当医とじっくり話し合うことが必要だろう。
※女性セブン2021年2月18・25日号