失敗ばかりの日本のコロナ対策。かつて高度経済成長の進展に貢献した池田勇人氏が生きていたら、このコロナ禍をどう乗り切っただろうか──。元厚生大臣の津島雄二氏が、過去の歴史を振り返り、現状を打破するヒントを提言する。
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コロナ禍で日本が八方塞がりになっている今、求められているのは池田勇人さんのようなネアカの総理大臣です。
所得倍増計画というと相当な大風呂敷の目標ですが、池田さんに「私は嘘を申しません」と言われると、当時、大蔵省官僚だった私を含め、国民はみな信じたくなる。そういう雰囲気でした。
新型コロナを収束させるのは容易ではなく、取るべき対策を粛々と進めるしかありません。そのため安倍政権も菅政権もコロナ対策を担う厚労省を重視してきましたが、肝心の厚労省が動かない。
その点、池田さんは動かない役所を動かす手法を心得ていました。所得倍増計画のときは、総理がイケイケどんどんの目標を提示するので、省庁のなかでも最も慎重になりがちな大蔵省の役人たちも、引っ張られる形で協力させられていった。
池田さんなら「PCR検査を1日に何人以上に実施する」「コロナ病床を何床確保する」という具体的な目標を国民に提示して、厚労省が行なわざるを得ない状況にしたでしょう。
一方で、目先のコロナ禍だけに気を取られているわけにはいきません。コロナ収束後の経済成長の下地を今から固めておくことが必要です。大切なのは先端技術への投資で、早々に対応しなければ、あっという間に中国に追い抜かれてしまう。コロナ禍にあっても、技術開発の手を止めてはならないのです。
菅政権もデジタル化やカーボンニュートラルといった政策を打ち出し、次世代に向けた取り組みを掲げていますが、どうも国民はピンときていない。国民の期待の高まりが後押しとなり、国を挙げての技術開発が進むのですが、菅総理の発信力が欠けているため、残念ながら具体的なイメージが抱けないのです。