これ何科の問題!? 麻布の入試問題
次は入試問題での珍しいケースをお届けしましょう。私立御三家の麻布中学校は毎年ユニークな出題をすることで知られています。今回は思考力を問う難問や長文の自由記述といった問題ではなく、皆さんがすぐできる問題の紹介です。
次の問題をAとします。
設問:下線部(1)について、最後の氷期に日本列島にわたっていた人々による文化として最も適当なものを次のア~エから選び、記号で答えなさい。
ア 仏教 イ 土器 ウ 鉄砲 エ 通貨
もう1つをBとします。
設問:下線部(1)について、このことがらに関係が深いことわざとして最も適当なものを次のア~キから選び、記号で答えなさい。
ア 急がば回れ イ 馬の耳に念仏 ウ のれんに腕押し エ 覆水盆に返らず オ 仏の顔も三度まで カ 笑う門には福来る キ 犬も歩けば棒に当たる
Aは社会、Bは国語の出題だと思いますよね。この2問とも今年同じ教科で出された問題で、なんと理科です。問題文中の下線部を記してみましょう。
Aの下線部は、〈この氷期の終わりごろに、人々は陸地をつたって大陸から現在の日本列島にわたり、日本列島に広く定住しました〉です。一方Bの下線部は、〈管の中の水に広がったインクは自動的に元の位置に集まって1滴のインクにもどることはありません〉です。
問題文を見れば当然理科なのですが、出題者は敢えて社会や国語の要素を混ぜ込んでいるのです。麻布らしいユーモアのセンスが感じられます。
もっと言えば、これからの時代に必要とされる学際的な人材がなかなか育たないのは、高2で文系・理系に分かれてしまうことにあるという危惧からの出題とも思えるのです。「自分は理系人間だから社会や国語はやらなくていい」という人間にはなって欲しくないというメッセージととれるわけです。
大学にも学際的な学部が設けられるようになっていますし、社会に出れば文系でもITスキルが求められる時代です。中学入試においても、合科型入試、総合入試という特別な入試でなくても、ごく普通の教科試験の出題にも今後融合的なものが増えていくとみています。
いかがだったでしょうか。ネット上では偏差値や大学合格実績での学校比較が盛んに行われていますが、実際にはそうしたことで測れる単線な世界ではなく、もっと個性的な世界であることを知っていただければ幸いです。