出願者全員が受験、合格者全員が入学手続きの「奇跡」
高校などの推薦入試(中学入試でも千葉には推薦入試が存在)では、出願者全員が受験、合格者全員が入学手続きということはごく普通にあります。が、一般入試では長いこと中学入試にかかわる仕事をしてきた私にも経験がないことでした。
参考までに受験率(出願者のうち何人が受験したか)とはどのくらいのものなのか、例を4つ挙げましょう。いずれも男子校・女子校の難関校です。
【開成】出願1243名/受験1051名/受験率84.6%
【麻布】出願881名/受験844名/受験率95.8%
【桜蔭】出願581名/受験561名/受験率96.6%
【女子学院】出願723名/受験664名/受験率91.8%
開成は例年、関西や九州からも志望するケースが多く、出願はしたけれども受験には来なかった受験生もいるため下がりますが、こうした誰もが憧れる学校でも100%にはならないものなのです。
それが2021年の入試では100%の学校が出現したのです。明星学園中学校です。第1回の2月1日午前のA入試。出願者115名が1人の欠席者もなく全員が受験、さらに合格者を64名発表したところ、全員が入学手続きをしたのです。まさに「奇跡」がダブルで起こりました。
生徒の「自由」「個性」を尊重することで知られる明星学園中学校
明星学園といってもご存じない方が多いかもしれません。大正デモクラシーの時代に「自由」「個性」を尊重する教育思想の基で誕生した学校です。それだけに、一般の学校が主要教科の学習に力を入れているのに対して、芸術教科・総合探究科を大切にしています。
昨年末亡くなった絵本作家の安野光雅さんが教員をしていたこと、YOASOBIのボーカルikuraさんが卒業生であることでも雰囲気が分かるかと思います。そのほかにも、特別授業『この人に会いたい』などユニークなものがたくさんあり、これは私の感想ですが、「この学校を卒業したら、人生が豊かになるだろうな」と、そんな感じがする学校です。
今回、ダブルの「奇跡」と同時に、このようなタイプの学校が出願者を増やしたことに、新しい学校選択の脈動も感じました。
屋上で「哲学対話」をするユニークなカリキュラムも(明星学園中学校)