日本一入試が多い学校の「プレゼン入試」とは
中学入試というと、主として2科(国語・算数)か4科(2科に加え理科・社会)で筆記試験が行われることはご承知だと思います。近年はそれに加えて英語1教科入試、算数1教科入試のほか教科型でない入試も増えています。
それにしても驚くのは、1校で10種類もの入試を行った学校があったことです。それは宝仙学園中学校共学部理数インターです。この学校は「日本一入試の種類が多い」と自負しています。どんなものがあるのか以下に挙げてみましょう。
「2科・4科型」「公立一貫型(適性検査)」「プレゼン型(リベラルアーツ入試)」「プレゼン型(AAA<世界標準>入試)」「プレゼン型(グローバル入試)」「アクティブラーニング型(入試『理数インター』)」「英語AL入試」「読書プレゼン入試」「オピニオン入試」。これに帰国生入試を加えて10種類の入試スタイルになります。
どんな入試なのか中身を想像できないものが多いのですが、例えば2019年に私が実際に見学した「プレゼン型(AAA<世界標準>入試)」はこんな具合でした。
AAAとはトリプルAで、アーティスト、アスリート、自分の得意なことを表します。受験者は男子2名、女子1名。小6なのに全員がノートパソコンを持ち込んでプレゼンしました。
女子は幼いころからチアリーディングをやっていて、小4では全国大会2位という成績。優勝チームと2位に終わった自分たちのチームとの違いについて発表していました。
男子の1人はモトクロスのユニフォームでさっそうと登場。「僕はBMXのライダーです」と自己紹介。日本代表として5回も世界選手権に出ているそうです。男子のもう1人はファーストレゴリーグの国際大会出場経験者。帽子には10個以上のバッチが付いていて、「いろんな国の子と友だちになりました。その証拠としてのバッチです」とアピールしていました。
実際に観ていて、こうした子どもたちを学校に入れれば、クラスが活性化するのではないか、他の生徒にエネルギーを与えてくれるのではないかと、そんなことを思った記憶があります。
このプレゼン型(AAA<世界標準>入試)が2019年から、読書プレゼン入試が2020年から、オピニオン入試が2021年から加わりました。つまり毎年のように1つずつ増やしているのです。
入試を行うということは、作問、検査、採点と大変な手間がかかります。そしてものすごく神経を使います。ですから普通の学校では教員の反対でできません。入試によっては受験生が2名しかいなかったものもありますから、時間的にも労力的にもものすごく効率が悪いものです。
しかし、この学校の姿勢は、塾に長期間通って平均的な学力をつけた子より、入学後に伸びそうな何か一つ光るものがある子を入れたいという点にあります。少し大げさに言えば、日本の従来の教育が均質的な人材養成であったことへのアンチテーゼとも言えます。
現在の中学入試のシーンにはこうしたインパクトのあるスタイルも登場しているのです。