「集団免疫の確立」には否定的な声も
集団免疫の確立については、専門家から様々な意見が出されている。
「この調査結果は、パンデミックの過程で多くの無症候性感染が発生したことを示している。約50%がウイルスに対する抗体を持っており、集団免疫を獲得する私たちの自然な方法となる」(オールインディア医科学研究所准教授)
「人々が抗体を作ったのは事実だが、インドは集団免疫を獲得するにはほど遠い」(オールインディア医科学研究所元医学部長)
「多くの人々は依然として感染のリスクが高く、ワクチン接種と新型コロナの取扱基準に従うことが重要」(インドのCOVID対策委員会委員長)
「集団免疫はワクチン接種から得られるべき。それこそが感染の拡大を止めて、感染していない人々を守る」(デリー医療協議会)
そもそも今回の抗体検査は、デリー首都圏で行われたもので、インド全体の状況を調査したわけではない。
もし首都圏で集団免疫に近づいたとしても、人々が都市間や、都市と地方の間を行き来すれば、インド全体では感染拡大が続いてしまう。自然免疫だけで、インド全体の集団免疫が達成できるかどうかについては、否定的な声が多いといえそうだ。
さらに、ウイルスの変異による感染再拡大を懸念する声も強い。2月の行動制限措置の緩和により人々の感染リスクが高まったところに、イギリス、南アフリカ、ブラジルでみられた感染力の強い変異種ウイルスが襲いかかれば、感染爆発が起こりかねないとの懸念だ。
感染数字そのものも「過小」の可能性
また、専門家の間では感染動向を示す数字自体に対する疑問の声も上がっている。
「報告された患者は、真の患者を反映しているわけではなく、検査を受けた人々を反映しているに過ぎない。このウイルスはインドで猛威をふるい、世界のどの国よりも急速に広がっている」(ハーバード大学医学部教授)
「患者の30~40%が無症候または軽症の感染となっていて、検査を受けていない可能性がある」(オールインディア医科学研究所所長)
「何人死んだか、分からない。誰も数えていない」(クリスチャン医科大学元教授)
このようにインドで公表されている感染者数や死亡者数の数字は実態より過少となっているとの声もある。感染しても検査を受けなかったり、死亡しても死因が決められなかったりといったケースが相当数あるようだ。