国内

60周年『みんなのうた』が目指す多様性と“子供番組ではない”の意味

写真/ゲッティイメージズ

『みんなのうた』は4月で60周年(写真はイメージ、ゲッティイメージズ)

 1953年にテレビの本放送が始まってから8年後に産声をあげたNHKの『みんなのうた』が、4月に60年を迎える。これまで『ちいさい秋みつけた』『手のひらを太陽に』『パプリカ』『大きな古時計』『北風小僧の寒太郎』など、数々の名曲を送り出してきた同番組だが、60年を経て番組を取り巻く環境は大きく変わった。

 少子化で子供の数が少なくなり子供番組が減少する一方、テレビはかつての力を失い、YouTubeなどネット勢力が台頭する。過去と現在では人々が規範とすべき価値観も大きく変わった。そんななかで『みんなのうた』はどう前へ進むのか。現在、エグゼクティブプロデューサーとして番組を統括する関山幹人さんはいう。

「もともとテレビを前提にしていましたが、これからはネットなどでいかに聴いてもらえるかを意識して、テレビを見ない人にも届けないといけません。また、歌の内容についても多様性が大事です。例えば『お母さんありがとう』という内容で聴き手の心が動くなら、その次は『お父さんありがとう』という感謝があっていい。1曲1曲で判断するのではなく、多様な価値観のラインアップを揃えたいですね」(関山さん)

 時の流れに応じて番組は変わっていくが、安易に時代に迎合するつもりはない。『「みんなのうた」が生まれるとき』(SB新書)を著書に持つ1998年から延べ12年にわたって番組プロデューサーを務めた川崎龍彦さんが大切に思うのは、「人生賛歌」であることだという。

「『みんなのうた』に通底するのは、生きて生活する人間への賛歌と共感ではないでしょうか。時代ごとに悩んでいる人、時代に取り残されそうな人に寄り添い、応援し、生きていることに賛歌を送り、それを歌に乗せることで、聴く人の心にじわじわ伝わればいいなと思います。『みんなのうた』は、時代ごとの文化や人々の悩み、喜びを伝えるタイムカプセルなのです」

 責任者として今後も番組を作っていく関山さんは、『みんなのうた』は子供番組ではないと語る。

「最初は子供たちに健全で明るい音楽を聴かせる番組として始まりましたが、60年経って当時の子供はお父さん、お母さんやおじいちゃん、おばあちゃんになりました。

『おかあさんといっしょ』は子供たちを対象にした番組ですが、『みんなのうた』は視聴者が成長し年齢を重ねても『卒業』することなく、いつまでも楽しんでもらえる番組でありたい。だからこれからも老若男女が聴く“みんなのうた”を作っていきたい。今後も5分という短い時間のなかに、いろいろなものをちりばめていきたいですね」

 わずか5分の番組が生み出した1500曲。その1曲1曲がみんなの心に住みつき、過去と現在をつなぎ、そして未来へと続いていく。

※女性セブン2021年3月11日号

関連記事

トピックス

国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン
国民に「リトル・マリウス」と呼ばれ親しまれてきたマリウス・ボルグ・ホイビー氏(NTB/共同通信イメージズ)
ノルウェー王室の人気者「リトル・マリウス」がレイプ4件を含む32件の罪で衝撃の起訴「壁に刺さったナイフ」「複数の女性の性的画像」
NEWSポストセブン
愛子さまが佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”とは(時事通信フォト)
《淡いピンクがイメージカラー》「オシャレになった」「洗練されていく」と評判の愛子さま、佳子さまから学ぶ“ファッション哲学”
NEWSポストセブン
年下の新恋人ができたという女優の遠野なぎこ
《部屋のカーテンはそのまま》女優・遠野なぎこさん急死から2カ月、生前愛用していた携帯電話に連絡すると…「ポストに届き続ける郵便物」自宅マンションの現在
NEWSポストセブン
背中にびっしりとタトゥーが施された犬が中国で物議に(FB,REDより)
《犬の背中にびっしりと龍のタトゥー》中国で“タトゥー犬”が大炎上、飼い主は「麻酔なしで彫った」「こいつは痛みを感じないんだよ」と豪語
NEWSポストセブン
(インスタグラムより)
《“1日で100人と寝る”チャレンジで物議》イギリス人インフルエンサー女性(24)の両親が現地メディアで涙の激白「育て方を間違ったんじゃないか」
NEWSポストセブン
藤澤五月さん(時事通信フォト)
《五輪出場消滅したロコ・ソラーレの今後》藤澤五月は「次のことをゆっくり考える」ライフステージが変化…メンバーに突きつけられた4年後への高いハードル
NEWSポストセブン
石橋貴明、現在の様子
《白髪姿の石橋貴明》「元気で、笑っていてくれさえすれば…」沈黙する元妻・鈴木保奈美がSNSに記していた“家族への本心”と“背負う繋がり”
NEWSポストセブン
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
「タダで行為できます」騒動の金髪美女インフルエンサー(26)が“イギリス9都市をめぐる過激バスツアー”開催「どの都市が私を一番満たしてくれる?」
NEWSポストセブン
ドバイのアパートにて違法薬物所持の疑いで逮捕されたイギリス出身のミア・オブライエン容疑者(23)(寄付サイト『GoFundMe』より)
「性器に電気を流された」「監房に7人、レイプは日常茶飯事」ドバイ“地獄の刑務所”に収監されたイギリス人女性容疑者(23)の過酷な環境《アラビア語の裁判で終身刑》
NEWSポストセブン
Aさんの乳首や指を切断したなどとして逮捕、起訴された
「痛がるのを見るのが好き」恋人の指を切断した被告女性(23)の猟奇的素顔…検察が明かしたスマホ禁止、通帳没収の“心理的支配”
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
【七代目山口組へのカウントダウン】司忍組長、竹内照明若頭が夏休み返上…頻発する「臨時人事異動」 関係者が気を揉む「弘道会独占体制」への懸念
NEWSポストセブン