ピーコさんに相談すると、快諾してくれた。講演料のことを伝えると、「だったら、私ももらえるわけないでしょ」とピーコさん。シャンソンを歌うのでこのお金でピアニストを連れて行きましょうという話になった。しかし、そのピアニストも二人がもらわないことを知ると、自分もボランティアで行きたいと言い出した。
わらしべ長者ではないけれど、こんな方法をとれば10人くらい有名人を呼べるな、とピーコさんと大笑いした。結局、用意されたお金は田村市に寄付をさせていただき、地域の子どもたちのために使ってくださいというお願いをして落ち着いた。
女子プロゴルフを開催している大王製紙からは、被災地で開催したいという相談があった。専門家がゴルフ場を放射能測定し、安全を確認したうえで、開催されたのが2015年、いわき市でのエリエールレディスオープンである。日本女子プロゴルフ協会も積極的に協力してくれたこの大会は、福島県民にとって大きな励みになった。
こんなふうに10年の歩みを振り返ってみると、その場に行くことができたからできたものばかりだ。10年間、交流を続けた懐かしい人たちに会うために、早く新型コロナに打ち勝って、安心して東北へ行けるようになったらいいなと思っている。
【プロフィール】
鎌田實(かまた・みのる)/1948年生まれ。東京医科歯科大学医学部卒業後、長野県の諏訪中央病院に赴任。現在同名誉院長。チェルノブイリの子供たちや福島原発事故被災者たちへの医療支援などにも取り組んでいる。著書に、『人間の値打ち』『忖度バカ』など多数。
※週刊ポスト2021年3月19・26日号