街では水につかった車の電気系がショートして、ガソリンに引火。車が引火物となって、さらに津波火災が連鎖していく。名城大学特任教授の川崎浩司さんもこう警告を発する。
「東日本大震災の後に何度も現場を訪れましたが、海が見えない地域でも被害が発生しています。津波の浸水想定範囲に入っていない地域で、“自宅にいた方が安全”と思っているところへも近くの河川から津波が遡上してきて、被害を受けているのです」
津波は銀座や丸の内、新宿や渋谷に到達し、水が地下に侵入。地下鉄のホームは水浸しになり、地下街の水かさがみるみるうちに増していく。階段を流れ落ちる水の深さは10cmほどもないが、高齢者は手すりに掴まっても上がることができず、階段の途中で立ち止まるのがやっとの状態。水かさがもう少し増せば、若い男性でも脱出は困難だ。
地下鉄車両のドアの内側からは「ドアが開かない。助けてくれ!」と懸命に叫ぶ声が聞こえるが、膝まで達した水の重みで、大人が束になってもドアはピクリとも動かない。
「津波が来る前に地上に避難しておかなければ、大変なことになる。たとえ水深10~20cmの水でも、逃げられずに溺死する人が相次ぐ可能性があります」(前出・高橋さん)