ライフ

桜木紫乃さんが語る最新作「親が子供に教えられるのは死に方だけ」

桜木紫乃さん(撮影/原田直樹)

最新作について桜木紫乃さんが語る(撮影/原田直樹)

【著者インタビュー】桜木紫乃さん/『俺と師匠とブルーボーイとストリッパー』/角川書店/1760円

【本の内容】
 昭和50年12月、グランドキャバレー「パラダイス」で働く章介の前に、3人が現れた。大男が口を開く。《「あたしがソコ・シャネル。こっちのおばさんがフラワーひとみ、このおじさんがチャーリー片西。今日から年明けまでこちらにお世話になります、よろしくね」》。「シャンソン界の大御所」「今世紀最大級の踊り子」「世界的有名マジシャン」の惹句とともに年末年始のパラダイスで営業する3人だった。ギャンブルに溺れ母を苦しめた父親が亡くなり、20歳になった年末年始の1か月、章介はキャバレーの寮で3人と同居することに──氷点下の釧路を舞台に、どん底にいるタレント3人と章介の笑いに満ちた温かな時間が始まる。

始まりは『大竹まこと ゴールデンラジオ!』

 おかしみとかなしみを感じさせるタイトルは、思いがけないところから舞い降りてきた。

「『砂上』という作品を書いたときに『大竹まこと ゴールデンラジオ!』に呼んでいただいたんです。釧路の話になって、大竹さんが自分も20歳のときに営業に行ったことがあって、そのときのメンバーが、『俺と、師匠と、ブルーボーイと、ストリッパーだったんだ』っておっしゃって。本番中なのに私、『それ、タイトルにいただいていいですか?』ってその場で言いました」(桜木さん・以下同)

 タイトルはそのまま、小説にだれが登場するのかも示していた。タイトルと登場人物が一瞬で決まるのは、桜木さんの作家生活で初めての経験だったという。

「ストリップは私、20年ぐらい前から見ていて、いい舞台を見せてくれる踊り子さんが札幌に来るときは通ってました。ブルーボーイは、カルーセル麻紀さんをモデルに『緋の河』という小説を書いています。だから自分が書かなきゃ、って思いました。釧路に営業に来ているあいだだけ4人が交差する、特別なことは何も起こらない、出会いと別れの話になるな、という予感もありました」

 実際に書き出すまでには1年以上かかっている。小説の「俺」は芸人ではなく、釧路のキャバレー「パラダイス」の下働きである20歳の章介になった。家族の縁が薄く、16歳からひとりきりで生きてきた青年だ。

 時代設定は昭和50年の暮れ。「パラダイス」に、マジシャンである師匠、ブルーボーイのソコ・シャネル、ストリッパーのフラワーひとみがやってくる。金のない3人は、ショーのあいだ、章介が暮らしているおんぼろアパートに泊まることになり、4人の共同生活が始まる。

「今回の小説は、シャネルの口上をメモしておいたぐらいで、あとはまったくのノープランで書いていきました。4人の会話ですすめていくのは、どこから弾が飛んでくるかわからないからすごく難しかったけど、書いてて楽しかったですねー。小説書くのはこんなに楽しいんだって、書き始めたころの気持ちがどんどん戻ってくる感じでした」

関連記事

トピックス

谷本容疑者の勤務先の社長(右・共同通信)
「面接で『(前科は)ありません』と……」「“虚偽の履歴書”だった」谷本将志容疑者の勤務先社長の怒り「夏季休暇後に連絡が取れなくなっていた」【神戸・24歳女性刺殺事件】
NEWSポストセブン
(写真/共同通信)
《神戸マンション刺殺》逮捕の“金髪メッシュ男”の危なすぎる正体、大手損害保険会社員・片山恵さん(24)の親族は「見当がまったくつかない」
NEWSポストセブン
列車の冷房送風口下は取り合い(写真提供/イメージマート)
《クーラーの温度設定で意見が真っ二つ》電車内で「寒暖差で体調崩すので弱冷房車」派がいる一方で、”送風口下の取り合い”を続ける汗かき男性は「なぜ”強冷房車”がないのか」と求める
NEWSポストセブン
アメリカの女子プロテニス、サーシャ・ヴィッカリー選手(時事通信フォト)
《大坂なおみとも対戦》米・現役女子プロテニス選手、成人向けSNSで過激コンテンツを販売して海外メディアが騒然…「今まで稼いだ中で一番楽に稼げるお金」
NEWSポストセブン
ジャスティン・ビーバーの“なりすまし”が高級クラブでジャックし出禁となった(X/Instagramより)
《あまりのそっくりぶりに永久出禁》ジャスティン・ビーバー(31)の“なりすまし”が高級クラブを4分27秒ジャックの顛末
NEWSポストセブン
愛用するサメリュック
《『ドッキリGP』で7か国語を披露》“ピュアすぎる”と話題の元フィギュア日本代表・高橋成美の過酷すぎる育成時代「ハードな筋トレで身長は低いまま、生理も26歳までこず」
NEWSポストセブン
「舌出し失神KO勝ち」から42年後の真実(撮影=木村盛綱/AFLO)
【追悼ハルク・ホーガン】無名のミュージシャンが「プロレスラーになりたい」と長州力を訪問 最大の転機となったアントニオ猪木との出会い
週刊ポスト
野生のヒグマの恐怖を対峙したハンターが語った(左の写真はサンプルです)
「奴らは6発撃っても死なない」「猟犬もビクビクと震え上がった」クレームを入れる人が知らない“北海道のヒグマの恐ろしさ”《対峙したハンターが語る熊恐怖体験》
NEWSポストセブン
大谷が購入したハワイの別荘に関する訴訟があった(共同通信)
「オオタニは代理人を盾に…」黒塗りの訴状に記された“大谷翔平ビジネスのリアル”…ハワイ25億円別荘の訴訟騒動、前々からあった“不吉な予兆”
NEWSポストセブン
話題を集めた佳子さま着用の水玉ワンピース(写真/共同通信社)
《夏らしくてとても爽やかとSNSで絶賛》佳子さま“何年も同じ水玉ワンピースを着回し”で体現する「皇室の伝統的な精神」
週刊ポスト
ヒグマの親子のイメージ(時事通信)
《駆除個体は名物熊“岩尾別の母さん”》地元で評判の「大人しいクマ」が人を襲ったワケ「現場は“アリの巣が沢山出来る”ヒヤリハット地点だった」【羅臼岳ヒグマ死亡事故】
NEWSポストセブン
真美子さんが信頼を寄せる大谷翔平の代理人・ネズ・バレロ氏(時事通信)
《“訴訟でモヤモヤ”の真美子さん》スゴ腕代理人・バレロ氏に寄せる“全幅の信頼”「スイートルームにも家族で同伴」【大谷翔平のハワイ別荘訴訟騒動】
NEWSポストセブン