なぜ副反応は女性に多く出るのか
注目すべきは、アナフィラキシーが出た37人のうち、35人が女性だったことだ。3月1日には、ワクチンを接種した60代女性が、くも膜下出血で死亡した。血液内科医の中村幸嗣さんが指摘する。
「このかたはワクチンを打ったからくも膜下出血を起こしたのではなく、もともと発症のリスクがあり、たまたまワクチンを打った後にくも膜下出血を起こしたのだと考えられます。ただし、ワクチンの副反応でくも膜下出血が生じた可能性はゼロではなく、現時点での断定は避けるべきです」
確かなのは、諸外国でも日本と同様に女性の副反応被害が多く出ていることだ。アメリカのCDC(疾病対策予防センター)が約1380万回分の接種データを分析したところ、接種後に副反応を訴えた人のうち78.7%が女性だった。またスイスでも、ワクチンの副反応597例のうち68.7%が女性だった。3月8日、米ニューヨークタイムズ紙はこう報じている。
《ワクチンに対する稀なアナフィラキシー反応は、ほぼすべてが女性に起きている。CDCの研究によると、(製薬メーカーの)モデルナ製のワクチンでアナフィラキシーが出た19人は全員が女性で、ファイザー製のワクチンでアナフィラキシーが出た47人のうち44人が女性だった》
化粧品にかぶれやすい人は注意
なぜ、女性はワクチンの副反応が出やすいのか。まず考えられるのが、女性ホルモンの影響だ。
「そもそも、ホルモンと免疫はお互い密接にかかわっていることがわかっています。エストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンは、免疫細胞の表面に結合して、その相互作用でより強い免疫反応を引き起こすことがあります。そうした作用により、“過剰な免疫反応”が発生して、自分の体を攻撃してしまう恐れがあるのです」(一石さん)
逆に男性ホルモンのテストステロンは、免疫機能を抑えるという。
「テストステロンが多い男性は通常の免疫機能が抑えられ、ワクチンによる予防効果が低くなる可能性があります」(一石さん)
遺伝子の「性差」も指摘される。
「遺伝子における『X染色体』を女性は2つ、男性は1つ持っています。免疫関連の遺伝子の多くはX染色体上にあり、男性の2倍のX染色体を持つ女性は、免疫遺伝子が強く作用する可能性があります。
実際、リウマチや慢性甲状腺炎など、免疫機能の暴走によって起こる『自己免疫疾患』は、全体の8割が女性に発症します。同様にX染色体における免疫遺伝子が強く作用することで、ワクチンの副反応が起こりやすくなる可能性があります」(一石さん)