「基本的には『業務委託』なため、固定給はゼロ。同じような境遇でなんとかアイドルを取り繕っている子はたくさんいて、物販でモノを売らないと歩合給がもらえません。ファンの方に抱きついたり、顔を近づけてみたり、セクシーな衣装を着て、たくさん買ってくれるファンとベタついて見せて、別のファンを煽って物を売るんです」
当然、契約の段階で「業務委託」の件は知っていたが、やはりここでも「芸能界はこういうもの」と自分に言い聞かせて過ごしていたという。これはアイドルがする仕事じゃない、と本音で思っていた。しかし、アイドルはなんでもやるものだ、と全員が自分に言い聞かせていたからなのか、みんな押し黙ってやった。
「おかしい、とはみんな思ってましたよ。でもアイドルでいられるにはこうするしかない。みんな、アイドルになりたいと思って、アイドルでい続けたいと必死なんです。複数の男性ファンと体の関係を持って、毎月、一定数量のグッズを買ってもらう、中にはお小遣いをもらっている子も少なくなかったです」
そんなアイドル業界にも、売れている子とそうでない子のヒエラルキーが存在していた。売れていない子がこうした営業を必死に続け、その方法が荒んだ形になるのは想像しやすいだろう。だが、売れている子たちですら、より自身の立ち位置を磐石にするためなのか、危ない橋を渡るのを選択する者が後を経たなかったという。
「まずはステマ(ステルスマーケティング)ですよね。あとは、情報商材を販売するグループのパーティーに呼ばれて出演料をもらったり、そのグループ幹部の彼女になった子もいました。そのグループのトップの名前をネットで検索すると『詐欺師』と呼ばれているような人で、普通ならそんな危ない仕事をやらないはずですが、やっぱりアイドルでいるためには仕方なかったのかなと」
結局、この情報商材グループのメンバーが複数人逮捕され、幹部も、その幹部と交際していたアイドルも行方をくらましたという。
「下っ端(アイドル)はファンに媚び売って、上の(レベルの)子も、金主というか、パパ探しに翻弄されていました。芸人の闇営業ってあったじゃないですか? あれよりもっとひどい。事務所の社長から言われて参加したイベントが、聞いていなかった怪しげな撮影会で、露出度の高い服を着せられたりしたんです。現場で怒るんですが、撮影会の主催者が事務所のバックアップをしているのだ、と聞いた瞬間、いやでもやんなきゃ、仕事なんだって頭を無理矢理切り替えるんです。上の子たちは、もっと過激なことをやって、そのうち誰か面倒みてくれる人を見つける。それでお金に困らなくなると、アイドルでい続けることに疲れて、やめちゃうんです」