橋本はペア碁の大会が開かれるたび、会場に駆け付けた。「世界ペア碁最強位戦2017」には大会顧問として名を刻んでいる。なぜか昨年の大会は欠席しているが、橋本はこの5年間、「プロ棋士ペア碁選手権」、「世界ペア碁最強位戦」と毎回のように参加し、挨拶してきた。まさしく皆勤賞ものだ。
わけても2019年12月の「国際アマチュア・ペア碁選手権大会」の3か月前の9月、橋本が五輪担当大臣に就任。ペア碁大会のスピーチで会場を大きく沸かせた。
「先ほど松田(大会)会長からは、考案をした滝名誉会長にぜひノーベル賞をというお話でありましたけれど、私の役割は、ペア碁をオリンピック種目にすることだと思っております。オリンピック・パラリンピックというのはスポーツの祭典だけではなくて、芸術や文化やあるいはファッションも含めてすべてにおいて融合された東京大会でありたい……」
むろん東京五輪の競技にペア碁が加わることはなかったが、関係者たちは真顔で近い将来の五輪種目に加えようと働きかけてきたのである。
そして菅政権が誕生すると、滝は文化功労者に選出され、橋本はコロナ禍の130人パーティーに参加。宴への参加は菅の名代でもあったのではないだろうか。
橋本事務所は「ご指摘の会は、感染対策は徹底されていました」「ペア碁は、2020年東京五輪の追加種目候補となったコントラクトブリッジなどと同じく、優れたマインドスポーツのひとつであると認識しております」と答えた。
首相の菅を中心に、ぐるなび滝や東北新社、文化庁の宮田、そこに新たに組織委会長になった橋本と縁故が広がり、五輪に突き進む。が、彼らにはコロナ禍の出口が全く見えていない。
【プロフィール】
森功(もり・いさお)/1961年福岡県生まれ。岡山大学文学部卒。新潮社勤務などを経て2003年よりフリーに。2018年、『悪だくみ―「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』で大宅壮一ノンフィクション賞受賞。近著に『鬼才 伝説の編集人 齋藤十一』『菅義偉の正体』。
※週刊ポスト2021年4月2日号