瞬間最高視聴率は日本のドラマ史上最高の62.9%を記録。平均視聴率も50%を超え、世界各国で放送されて、大きな反響を呼んだ。橋田さんは、北極へ行く船の中で、同行していた泉ピン子を見かけた台湾の人たちが「おしんママ!」と感激するのを見て、びっくりしたという。
貧しさや苦難に負けないおしんの姿に“辛抱が大事”というテーマを感じ取った視聴者は多かった。「おしん、辛抱」は流行語になった。しかし、橋田さんが描きたかった大事なテーマは、身の丈にあった暮らしの大切さ、「人生足るを知る」ことだった。ちょうどバブル前で世の中が浮かれ始めていた時期。戦後、食べ物があるだけで幸せと思いながら生きてきた橋田さんは、欲を出しすぎると危ないと思っていたのだ。
もっとも、あまりに要望が強いので、橋田さん本人も観念し、色紙には『おしん辛抱』と書いていたのよ、と笑っていた。こんなお茶目なところも、多くのスタッフ、俳優陣に慕われた理由だろう。コロナ禍に立ち向かう日本の家族を橋田さんならどう書いたか。観たかった。