ニュートンが磨いた「孤独力」とは
そんなニュートンの華々しい活躍の影響で、ある噂が流布されることになる。それは、「父の死後に生まれた男児には超能力がある」というもの。ここには、ニュートンの複雑な家庭環境が影響している。
ニュートンは実の父に会ったことがなかった。生まれる3か月前に死去しているからだ。
思えば、喜劇王のチャップリンも生まれてすぐに離婚したため、母に女手一つで育てられた。発明王のエジソンの場合は、父は健在だったが、小学校中退してからは、母が教師役となり、エジソンを温かく見守っている。偉人の才能を伸ばすのに、母が大きな役割を果たしているケースが少なくない。
アイザック・ニュートン(時事通信フォト)
だが、ニュートンの場合は、父がいないだけではなく、母が3歳のときに再婚。しかも再婚相手の富裕な司祭バーナバス・スミスのもとへ去っていってしまった。残されたニュートンは祖母のもとで育てられることになる。
幼くして母から引き離されたニュートン。少年時代はふさぎがちで、友達と外で遊ぶこともなかったようだ。孤独な少年はひたすら内省しながら、自然と対峙することになる。自身の少年時代を、ニュートンはこう振り返っている。
「海岸で遊びながら、ほかのものよりすべすべした小石や、きれいな貝殻を探して遊んでいる子どもだ。その向こうで、真実という偉大な海は未知のものとして私の前にずっと横たわっていた」
日々の孤独な自然観察が、ニュートンの科学者としての道を開くこととなった。
ペストによって生まれた予期せぬ空白期間は、大学生になったニュートンを再び、孤独な子供時代へとタイムスリップさせたのではないか。ニュートンはこんな言葉も残している。
「孤独は天才の学校である」
まさに、逆境とは「自分を孤独な場においてくれる」という点で、人生における贅沢な時間といえるのかもしれない。