「スマホ端末のスペックが高止まりしていることもあります。新製品が出ても、新しいものを追いかける魅力がなくなったということです。それで、スペック的に大きく変わらないのならば型落ちの中古でもいいか、と考える消費者が増えてきています」
改正電気通信事業法とスペックの高止まりによって、中古スマホが一気に注目されることになったのだ。つまり、つい最近になって大きく動きはじめたビジネスだといえる。
粟津社長が携帯市場を設立したのは2007年1月で、まだ中古携帯のマーケットそのものが存在しないに等しいようなときだった。それでも中古携帯ビジネスに乗り出したのは、メーカーに研究職として勤めていた粟津社長が、「自動車をはじめ中古市場があるのに、携帯電話だけがない。だから、将来的にはビジネスになっていくに違いない」と考えたからだ。
当時は、中古携帯電話は国内では「ヤフオク!」などで細々と取引されていたが、大半は中国をはじめとする海外に送られていた。貧富の差が大きい地域では新品を買えない人たちも多くいるので、中古携帯電話のニーズがあったのだ。携帯市場も当初、そうしたマーケットが主なターゲットだった。
ただし、取引をするにも、仕入れがなければ成り立たない。取引を拡大するためにも、仕入れを増やしていく必要がある。当初は、ヤフオクなどで仕入れていたが、とても間に合わなくなる。
「ブランドの中古買取りショップとかリサイクルショップ、それからチェーンのクリーニング店を仕入れ先として開拓していきました」
と、粟津社長。とはいえ、そういうところには、中古携帯電話の状態を見分けるノウハウがない。売れないものをいくら集めてもらっても、商売にはむすびつかない。そこで粟津社長は、中古携帯電話の状態を簡単に見分けることのできる、業界としては初めてのシステムを開発する。研究職の経験が、ここで活かされたわけだ。
「システムを使って、あるレベルをクリアしていれば、たとえば1万円で買い取るという約束をします。店舗では6000円で買い取れば、4000円の利益になるわけです。それを説明しながら、窓口になってくれるところを増やしていきました」
販売先はネットが中心だったが、最近になって伸びてきているのが、企業との取引だという。年間13億円ほどという売上の6割近くにまでなってきている。
「企業が仕事用として社員に配布するのに、中古でもいいという意識になってきています。特に昨年からの新型コロナウイルスの影響で在宅勤務が増えてきて、仕事専用の中古スマホの需要が急増していますね」
市場は広がっているが、課題もある。中古スマホのネックといえばバッテリーだ。バッテリーの劣化がきっかけで買い替えを考える消費者は少なくないし、バッテリーの状態が気になって中古の購入を躊躇するという人もいるだろう。