メインの5人だけでなく、その周りを囲むキャストにも主役級が揃っている。主演ドラマ『珈琲いかがでしょう』(テレビ東京系)も好評だった中村倫也(34才)をはじめ、小野莉奈(21才)、芳根京子(24才)、木村文乃(33才)ら、“作品の顔”を担える俳優陣が脇を固めているのだ。この強力な布陣の中で、仲野が負う責務は大きい。なぜなら、マクベスの動向がカギを握る本作において、マクベスのムードメーカーである潤平は作品そのもののムードメーカーでもあるからだ。全員主役級のメンツの中で、場の空気を変える相応の実力が無ければ務まらないだろう。
実際に劇中では、潤平の言動の一つひとつが笑いを生み、各シーンのムードをぐっと変化させている印象だ。そんな潤平を演じる仲野に与えられた本作でのポジションは、物語を転がすプレイヤーに他ならない。誰かしらが発した言動を受けて、それを彼がさらに展開させている。受け手がいてオチが生まれるコントと同じで、ドラマというものも、やはり受け手がいなければ先には進まない。
例えば、菅田が演じる春斗は多情多感な性格の持ち主であり、よく笑い、よく怒る。こうして春斗が物語を“起こす”わけだが、彼のアクションに対して受け手である潤平が“笑い”や“怒り”でリアクションすることによって、作品全体のムードが変化し、さらに展開していくのだ。物語がコメディに傾くかシリアスに傾くかを決定づけるのは、絶妙な間を生み出すリズム感の持ち主であり、大小高低と巧みに声を操る彼の力に拠るところが大きい。“全員主役級”の作品で仲野がこのポジションを担っているというのは、彼の役者としての信頼度の高さの証だろう。
思えば、今年公開された映画『すばらしき世界』や『あの頃。』で演じた役も、タイプこそ違えど、潤平役と近しいポジションだったのではないだろうか。前者では役所広司(65才)の演技を、後者では松坂桃李(32才)の演技を受けて、仲野が物語を展開させていたように思う。本作でも、菅田が主役としてドラマの舵を切り、仲野が帆船を進めている。彼こそが本作で最も重要な“柱”なのである。
【折田侑駿】
文筆家。1990年生まれ。映画や演劇、俳優、文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画の劇場パンフレットに多数寄稿のほか、映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」ではMCを務めている。