2020年5月21日午後、改正少年法が参院本会議において賛成多数で可決、成立した(時事通信フォト)
いわゆる”病み客”と呼ばれる客層のことで、わかりやすい”クソ客”よりも嬢を壊す。壊すどころか猟奇的な趣味を実行するかもしれず、店では最大のNG客だ。しかしデリは箱(店舗)ではないので即対処というわけにはいかない。駆けつけるにも(車で待機するパターンであっても)時間がかかる。派遣なので女の子は基本、一人で客が指定する部屋に行く。生活のためとはいえ、尋常でない怖さだろう。ましてやこのコロナ禍だ。
「コロナでデリやってる私もヤバいけど、コロナでデリ呼ぶ人ってのもヤバい」
それでも客は減ったという。SAYAさんもお金のために仕方なく、多少は嫌な客でも機嫌をとって次の指名に繋げるという。
名前を出してもいい存在。わかっていても、悲しい
「立川のデリは都心に比べたら稼げません」
これもまたSAYAさんの感想で、筆者も詳しくはないのだが、コロナ禍で風俗も壊滅的だ。店舗に比べればデリはマシと聞くが、都下や地方となると事情は変わるのかもしれない。
「冷たい店も多いです。同じ仕事してる子たちともやり取りすると愚痴ばかりです。ドラ(デリヘルのドライバーのこと)は優しい人多いですけど、在籍スタ(デリヘルの事務所スタッフ)はやる気ないし」
店にもよるのだろうが、コロナ禍の長期化と不景気は夜の店関連も女性の買い手市場へと大きく変貌した。
「(私たちは)商品ですからね。私はあまり信用しません」
いろいろと事情があるようだが個人的な話なので割愛する。事件ではスタッフもデリ嬢のSOSに駆けつけて怪我をしているが、そのスタッフの名前は出なかった。
「デリ嬢だけ名前出すって、結局そうなんだろうなって思います。死んでもいいし名前を出してもいい存在、わかってはいますが、悲しいです」
SAYAさん、人とうまくやれるタイプではないから箱ではなくデリだという。自走(デリ嬢が自分で運転して派遣先に向かう行為)ができるのもデリの気楽さだが、エッセンシャルワーカー全般の問題として(筆者はこの職業定義に貴賤なしと考える)お客様すべてを満足させるのは難しい。匿名掲示板で”殺されて当然の存在”のような書き込みを見ると落ち込むという。某地域別の匿名掲示板などは客による嬢に対する誹謗中傷が跋扈している。
「いろいろあってこの仕事をしてます。自分で選んだ仕事です。わかってます。でも書かれると傷つくし、殺されたら(日本中に)デリ(嬢)が死んだって名前出されて、デリなんか死んで当然って、あんまりです」