幕張新都心。海浜幕張駅、幕張メッセ、ZOZOマリンスタジアムが並ぶ(時事通信フォト)

幕張新都心。海浜幕張駅、幕張メッセ、ZOZOマリンスタジアムが並ぶ(時事通信フォト)

 それならばJR東日本と、地方自治体、イオンモールの3者で構成される幕張新都心拡大地区新駅設置協議会に駅名決定を委ねることもできたが、「新駅名称は鉄道事業者のJR東日本に任せたい。協議会は市民・利用者に駅名公募を周知することに力を入れたい」(幕張新都心拡大地区新駅設置協議会の担当者)という意図もあり、最終的に公募することになった。つまり、公募の意見を参考に、JR東日本が幕張新駅の名前を決める。

 公募は高輪ゲートウェイ駅のような反発を再び起こす不安もある。心配は尽きない。そして、そのほかにも気になる点がある。幕張新駅の駅舎が、南側だけに開設される予定になっていることだ。

 確かに、幕張新駅の南側にはイオンモールが旗艦店と位置づけるイオンモール幕張新都心がある。新駅が開業すれば、これまで海浜幕張駅からシャトルバスでの移動を伴っていた利用客にとって、駅から徒歩でアクセスできるようになる。それは大きく利便性を向上させることだろう。だが、新駅の北側に何もないかというと、そうではない。

 北側には、千葉運転免許センターや独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構技術センターといった公的機関などが立地している。なにより、住宅街も広がっている。それだけに、北側にも新駅の駅舎を設置してほしいと望む声も挙がっている。地域住民のことを考えれば、その声は無視できない。

「現在、協議会は新駅の南側と北側のエリアを連絡する跨線橋の建設を検討しています」(幕張新都心拡大地区新駅設置協議会の担当者)

 要望を受ける形で検討されている南北をつなぐ自由通路は、あくまでも議論されている段階。そのため、新駅開業には間に合わない。また、計画されている自由通路もただ通路をつくればよいというわけではない。というのも、京葉線は幕張新駅から東京駅方面へ向かう”のぼり”が高架線、蘇我駅方面へと向かう”くだり”が地上線を走っている。自由通路のためには、高架線の高さを上回る跨線橋を実現させるか、地下通路を掘るしかない。

 そんなややこしいことをせずとも、”のぼり””くだり”両線ともに高架線にすれば、地上にまっすぐ通路を通せるではないかと思われるかもしれない。両線を高架にすればホームの配置はすっきりし、駅コンコースなどの動線も整理される。それは混雑緩和・誤乗防止・利便性の向上といった効果も期待できる。

これだけだと駅の利用者だけのメリットのようにも感じられるかもしれないが、駅の混雑緩和や誤乗対策は事故の低減につながり、それは定時運行という形で京葉線利用者全体が恩恵を受ける。しかし、地上を走る”くだり”の線路を高架線へと切り替えるには大規模な工事が必要になる。現実的ではない。

 こうなると、自由通路は地下に建設するのが一番スマートのようにも思える。しかし、「建設費が莫大になるので、地下の自由通路は検討していません」(幕張新都心拡大地区新駅設置協議会の担当者)と、こちらも現実的ではないらしい。

 そのため、幕張新駅の南北を結ぶ自由通路は線路をオーバークロスする跨線橋として検討が進む。確かに地下に自由通路を設置するより跨線橋の方が安価になるが、高架線をまたぐので通常よりも高い位置に建設せざるを得ない。当然、費用はかさむ。協議会は自由通路の建設費用を約50億円と試算し、それらは千葉市が全額を負担することになった。ところが、建設費用が理由なのかは分からないが、議論の過程で自由通路は「将来の課題として整理する」という留保がつく。

 幕張新駅の開業は、あくまでも最初の一歩。周辺住民にとって使い勝手のいい駅を実現するまでは根気を求められる日々が続く。

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