育休を取得している男性職員らと懇談する小泉進次郎環境相(右端、時事通信フォト)

育休を取得している男性職員らと懇談する小泉進次郎環境相(右端、時事通信フォト)

「社内規定で男女の区別なく育休が義務になったと聞き、早速人事部に申請を出しました。最大3ヶ月まで取れる、と説明されましたが、流石にまるまる取るのはアレかと思い、2ヶ月の育休を取ることになったんです」

 都内の人材会社勤務・坂本太志さん(仮名・40代)は、4年前に次女が生まれたタイミングで2ヶ月の育休を取得。上司や同僚は「素晴らしいことだ」と育休を取ることへの後押しをしてくれたように感じていたが、休暇明けに会社へ行くと、やはり2ヶ月前との「空気感の違い」を感じた。

「たった2ヶ月だけどされど2ヶ月、その間は仕事をせず休んでいたのだから、ということなのか、育休をとる直前まで担当していた仕事は上司や部下に回され、私はすっかり浮いてしまいました」(坂本さん)

 不安になった坂本さん。一番懇意にしていた女性部下を呼び出し話を聞いた。すると、坂本さんが休みの間、男性社員たちはすっかり手のひらを返したように、坂本さん批判に花を咲かせていたとわかったのだ。

「義務というか、男性社員の権利ではあるけど、それを使わず黙って仕事をするべき、男なのに今風な流れを盾に自分だけ休んでずるい、と言われていたんです。表向きには歓迎しておきながらそれはないだろうと。これでは子供を産んでも会社を休めず、子育てを女性に任せるしかなくなります。若い社員はそれを恐れて、結婚はしても子供を産みづらくなってしまう」(坂本さん)

 義務になれば、その義務を回避するために「そもそも産まない、結婚しない」という社員が出てくるのではないか、という懸念。これはすでに女性の世界にすでに存在している「悪しき習慣」そのものである。バリバリのキャリアウーマンでも、産休や育休を取得し、仕事のブランクが一年以上開くと、同期と圧倒的な差をつけられる。その差を埋めるべく仕事に励もうとしても、子育てのために時短勤務などが続き、差は広がるばかり。仕事で身を立てたいという女性は、結婚や出産を諦めるべき、というホコリを被った価値観もまた、今なお確かに存在するのである。

 今回の法改正が「無駄」とは言わないが、制度を作ることで、また義務化することで本当に男性でも産休や育休が「取れる」ようになるかは、企業や所属部署の空気感、上司の価値観によってかなり違ってくるはずだ。来年秋に施行が予定されているが、法改正を待つことなく、企業や経営者自らがこうした取り組みに積極的に参画していくのか、その動向に注目したい。

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