傾斜地に旅館や住宅が密集する熱海(共同通信社)
「短時間で大量の雨が降るよりも、少なくてもだらだらと時間をかけて降ると、地中に雨水が蓄積される。緩んだ斜面が崩れやすくなり、土石流を引き起こしたと考えられます。土砂災害が起こるのは、豪雨のときだけではない、という認識が重要です」
火山灰を多く含む流れやすい土、長く降り続いた雨。それらに加え、被害を大きくしたのが土砂崩れが起きた地点の深さだった。
「土砂崩れには、表土層だけが崩れる『表層崩壊』と、岩盤から崩れる『深層崩壊』に大別されます。今回は、土砂の量から見ても深層崩壊を起こしていると考えられます」(山本さん)
崩れた地点には2007年頃から「盛り土」がされていた。静岡県の発表によると、流れ落ちた土砂は約10万立方メートルと推測される。25mプールに換算すると約300杯分の量で、そのうち約半分が盛り土だったという。盛り土は、地元住民にとって気がかりな存在だった。災害現場から15分ほどの場所に住む近藤恵美子さん(仮名・54才)はこう振り返る。
「高台に建つMOA美術館の駐車場から見えていました。何が建つのかなと思っていたのですが、長いこと何も建たずに放置されていて。嫌な予感がしていました」
近藤さんが続ける。
「思い返せば、土石流が起こる直前に道路に小さな石が転がっていて。あれも予兆だったんでしょうか」
道路に転がった小石は時に土石流のサインとなる。
「斜面が不安定になると、まずは軽い小石から落ちてくるからです。ほかにも、斜面から水がちょろちょろ出ている、というのもあります」(山本さん)
急傾斜地に居を構えている人は、今回の災害を教訓にいま一度、自宅の安全度を確認する必要がありそうだ。
※女性セブン2021年7月22日号