髪を剃って死体を樽に入れると、酒を二人で飲み干してから「そうれん(葬礼)や、そうれんや! らくだの、そうれんや!」と大声で歌いながら焼き場へ向かう。道中の堺筋で砂糖屋の丁稚が「汚い葬礼やな」と言ったのを聞きとがめた屑屋は店の主人を脅して金を出させ、その金でまた酒を飲んでベロベロに。そこから一気にサゲまで突き進む。
上方落語らしさを存分に感じさせる陽気なドタバタの『らくだ』。独自の演出が冴え渡る大ネタで全12回のイベントを見事に締め括った遊方の、新たな“東京での独演会シリーズ”の実現を期待したい。
【プロフィール】
広瀬和生(ひろせ・かずお)/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接してきた。『21世紀落語史』(光文社新書)『落語は生きている』(ちくま文庫)など著書多数。
※週刊ポスト2021年7月30日・8月6日号