表彰台をスイスが独占(写真左は銀メダルのシーナ・フレイ選手。AFP=時事)
東京より2~3度ほど気温が低い伊豆とはいえ、会場内には水色のウエアを着て、派手なメイクとハイテンションなパフォーマンスで散水するスタッフの姿も。もし有観客でスポーツの祭典が開催されていたら、屋外競技では高温多湿な日本の猛暑を少しでも快適に過ごしてもらおうと彼らが重宝されたに違いない。
予定していた観客数とはほど遠いし、レースを見守る人の中に海外からの観客はいない。国内のスポーツイベントと広がる情景は大差ないものの、会場のスタッフもボランティアも、世界中からの来場者を出迎える準備をしてきたことが随所に窺えた。やはり日本でオリンピックは開催されているのだ。
20.55kmのコースを5周するクロスカントリー種目で、日本から唯一参加したのは今井美穂だった。しかし、試走の段階で胸部を痛めていたようで、スタートから大きく遅れ、残り3周となったところで規定タイムに届かず、レースから除外された。
群馬県の公立小学校の教師である彼女は、子どもたちに夢をかなえていく道程を見せることの重要性を口にし、日本人選手で誰も経験したことのない「完走」を目標に掲げていたが、それは果たせず参加選手中最下位となる37位で初めての五輪は終わった。
レース後、酸欠状態に陥った今井はミックスゾーンに現れず、日本自転車競技連盟を通じて、「このような結果になったが、やってきたことは出し切れた。とても幸せな時間だった」と談話を残した。
自国開催のオリンピックを生観戦できるプラチナチケットを手にして来場する観客に対し、組織委員会は会場における応援・声援の自粛を求めていた。だが、スポーツを、生のオリンピックを目の当たりにすれば、自然と声は出てしまうもの。ゴール地点を選手が通る度に大きな歓声が起きていた。