東京五輪では多くのスターが生まれている(撮影/JMPA)
五輪はテレビにとって救いの存在に
その他、メダリストであるかどうかにかかわらず各競技のレジェンド、苦労人、ムードメーカー、あるいは試合後に名言連発で男を上げた柔道の大野将平さんらなど、多くのアスリートが番組を盛り上げてくれるでしょう。
今回は日本開催だけに移動期間がなく、すぐに大半の選手が出演できるのもメリットの1つ。10代選手や学生選手も夏休み期間であるなど、「オファーのタイミングやハードルがこれまでよりも低い」という声があるのは間違いありません。また、すぐに試合や大会がはじまる選手たちもいますが、遠征先からのリモート出演も可能であり、よほど緊張感の高いものでない限り、出演に大きな支障はないでしょう。
さらに大きいのは、過去の大会と比べて事前番組への出演が少なかったこと。コロナ禍がなければ、「オリンピックの前から情報番組やバラエティに出演してもらい、プレーや人柄を紹介することで応援モードに入っていく」という流れがあるものですが、開催反対派も多かった今回はそれができませんでした。「今回はオリンピック開始前に出てもらえなかった分だけ、終了後のオファーが増えていく」と見られているのです。
民放各局にとって今回のオリンピックは、「今まで情報番組でさんざん開催危機をあおってきたくせに、手のひら返しで放送するな」「ダブルスタンダードだ」などと批判されていましたが、いざはじまってみたら救いのような存在になりました。
その理由は、高視聴率が獲得でき、テレビの視聴習慣やイメージアップなどの特需も得られた上に、コロナ禍の重苦しいムードを吹き飛ばす番組として視聴者とともに盛り上がれたからです。テレビマンの本音は、「せっかくいいムードが生まれたのだから、オリンピック関連の企画でこれを継続させたい」。もしコロナ禍が落ち着けば、無観客になってしまった競技場を生かした企画なども含めて、テレビマンたちはさまざまなプランを考えているでしょう。
五輪アスリートとしての使命感
一方、選手サイドから見るとテレビ番組への出演は、頑張ってきたごほうびのような場であり、それ以上に自らの愛する競技をアピールするチャンス。子どもから大人まで競技人口を増やせるほか、スポンサーがつくことを期待している選手もいます。
特にメジャーではない競技の選手にとっては、本人だけでなく関係者たちからの期待も背負っているもの。現役選手はもちろん、全国各地の指導者、協会、スポーツメーカーなどの期待に対して、「出演することで恩返ししよう」という気持ちもあるのでしょう。テレビ番組だけでなくイベントやCMも含めて、今年の残り約5か月間はオリンピックアスリートたちの姿を何度も見ることになりそうです。
閉会式の翌朝には2年ぶりとなる夏の甲子園大会がスタートすることもあり、まだまだライブ感あふれるスポーツ中継を楽しめる季節は続いていくでしょう。
【木村隆志】
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者。雑誌やウェブに月30本前後のコラムを提供するほか、『週刊フジテレビ批評』などの批評番組に出演し、番組への情報提供も行っている。タレント専門インタビュアーや人間関係コンサルタントとしても活動。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技」84』『話しかけなくていい!会話術』『独身40男の歩き方』など。
伊藤美誠も大活躍(撮影/JMPA)
バックハンドで返す平野美宇(撮影/JMPA)
エース・上野由紀子の歓喜(撮影/JMPA)