勢いのあった90年代を語る
甘糟 石田さんを前にして本当に申し訳ないんですけど、夜は外にいることが多く、連ドラを見るのがむずかしくて。『抱きしめたい!』や『想い出にかわるまで』は友人が録った録画でまとめて見てました。
石田:どちらの役柄も当時の流行語になった「3高」「ヤンエグ」の役でしたね。
甘糟:ヤングエグゼクティブの略ですね。今となってはなかなか恥ずかしい響きがありますよね。
当時の女性たちが高学歴・高収入・高身長のいわゆる「3高」と結婚したがったのは、まだ女性が自分で稼げる時代ではなかったから。私が大学を卒業したのは「男女雇用機会均等法」が定められた1985年なんですけれど、その法律が少しでも機能するようになったのは、ずっと後でした。
石田:1990年代当初は、今みたいに勝ち組負け組がそれほど顕在化していなかったから、普通の子でも玉の輿に乗れば一発逆転。そんな風潮があったように思います。
甘糟:誰にでもチャンスはあった時代でした。もしくは少なくとも「あるように思えた」時代でしょうか。
例えば、ディスコに行っても、何かの弾みに自分もVIPルームに座れそうな空気があった。若い女の子でなくても、そういうチャンスが実際にありましたよね。だから、入り口にドアマンが立っていて、店の雰囲気に合うかどうか客を見定めたりすることもエンターテインメントとして成り立っていたんじゃないでしょうか。今同じことがあったら、SNSで炎上しそうですよね。
「誰にでもチャンスはあった時代」と振り返る甘糟さん
【プロフィール】
石田純一/1954年、東京都目黒区出身。俳優。トレンディードラマでブレーク。現在、『斉藤一美 ニュースワイドSAKIDORI!』(文化放送)、『DaiGoと石田純一のおしゃべりゴルフ』(TOKYO MX〈放送予定〉)などに出演。
甘糟りり子/1964年、神奈川県横浜市出身。作家。ファッションやグルメ、車等に精通し、都会の輝きや女性の生き方を描く小説やエッセイが好評。著書に『エストロゲン』(小学館)、『鎌倉だから、おいしい。』(集英社)など。最新刊は1980年代後半から1990年代前半のあの空間と時間を描くエッセイ『バブル、盆に返らず』(光文社)。
撮影/矢口和也
※女性セブン2021年8月19・26日号