ブランドアイデンティティーの変容も
そんなスタッフにまず案内されたのがロビーラウンジだ。到着時のウェルカムサービスとしてソフトドリンクはよく見るが、こちらでは生ビールまで提供されていた。また、夕食後にアルコールや音楽を楽しめる「VIPラウンジ」もこれまでの大江戸温泉物語の施設とは一線を画すプレミア感をもたらしている(※現在、アルコールの提供は終日休止)。
岩沼屋の夕食もそれまでの大江戸温泉物語ではありえないスタイルを取っている。前述したように、大江戸温泉物語といえば広大な会場でのバイキング料理で知られるが、岩沼屋ではバイキングにせず地産地消の創作会席料理を提供している。
大江戸温泉らしからぬ岩沼屋の会席コース
確かにコロナ禍において料理の提供手法も変わりつつあるものの、これも大江戸温泉物語というブランドアイデンティティーの変容ともとれる。
前出の山田氏によると、「ご当地にはバイキングで有名な旅館もあり競合と差別化という点を鑑みて会席へシフトした」と語る。バイキングではないものの、最高料理顧問の高階氏も注力した宿自慢の会席コースに仕上がったと自信を見せる。
また、夕食時のアルコールがフリーというのも岩沼屋の特徴だ(※夕食時のアルコール提供も終日休止中)。宮城の地酒を含む豊富なラインナップがゲストに好評で、日本酒のセレクトは岩沼屋時代からの地元スタッフの意見なども反映されるという。
ご当地で伝統を紡いできた老舗旅館運営を引き継ぐ大江戸温泉物語の試行錯誤は、多様化する顧客ニーズに応えながら、今後も続けられていくだろう。